2009 Fiscal Year Annual Research Report
レヴァント商人活動とイギリス-オスマン帝国間カピチュレーションの形成に関する研究
Project/Area Number |
08J01824
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
林 香那 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | オスマン帝国史 / 地中海交易 / レヴァント商人 / カピチュレーション |
Research Abstract |
本年度はイギリス-オスマン帝国間の通商協定であるイギリス・カピチュレーション、特に1606年、1614年及び1621年の更新状況の検討を通して、当該時期の英土関係の解明に努めた。 具体的には、1606年の協定が黒海経由で絹の輸入ルートを確保するレヴァント商人の試みの成果であり、また1614年カピチュレーションにおいても、絹交易に対する保護が盛り込まれていることから、これらが以後のレヴァント交易の特徴である絹と毛織物の単品目交易の展開に通ずるものであることを指摘した。さらに大使ローの書簡からは海賊による被害がレヴァント交易を危機に陥れていたことが確認され、こうした状況を打開するための交渉が1621年カピチュレーション更新の直接的な契機であったことが明らかとなった。 イギリスのレヴァント交易は、17世紀前半には国内的な重要性が大きく、1620年代には毛織物と絹の単品目交換という特徴的な交易形態を形成するに至る。一方でレヴァント・カンパニーの金銭的な困窮から交易の維持が困難になり、大使任命権もイギリス王とカンパニーの間で争われるなど大きな転換点にあったが、当該時期のレヴァント交易の状況について中心的に扱った研究は見られない。 そこで本年度の研究より、17世紀初頭にレヴァント交易が困難に陥る中で、イギリス大使を中心としたレヴァント商人らは交易基盤を確保し、レヴァント・カンパニーによる既存の交易活動を維持するべくカピチュレーションを更新していたことが明らかとなったが、レヴァント交易の展開を見れば、これは1620年代以降の毛織物と絹の単品目交換という特徴的な交易形態へと移行する前段階と位置づけられ、レヴァント・カンパニーによる独自かっ独占的な交易を強固にする下地となつたと推測することができた。
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