2008 Fiscal Year Annual Research Report
多置換型芳香族化合物を用いた新規分子触媒の合成と反応開発
Project/Area Number |
08J01828
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩井 智弘 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 均一系遷移金属触媒 / リン配位子 / アルデヒド / 脱カルボニル化 |
Research Abstract |
均一系遷移金属触媒において配位子は触媒の立体的かつ電子的性質を制御する重要な要素である。用いる中心金属によりその反応性が大きく異なるため、適切な金属と配位子の組み合わせによって高活性な触媒が生み出される。私は多置換型芳香族化合物を用いた新規配位子の合成と触媒反応への応用を目的とし、より高活性な触媒系の構築を目指して本研究に着手した。その結果、イリジウム触媒を用いたアルデヒドの脱カルボニル化反応が、従来の触媒系よりも極めて温和な条件のもと進行することを見出した。従来法ではロジウム触媒を用いて160℃以上の高温を要したり、化学量論量のロジウム錯体を用いたりするため、より高活性な触媒系の開発が望まれている。今回開発したイリジウム触媒は触媒前駆体として入手容易な[IrCl(cod)]2を用い、配位子に一般的なリン配位子であるトリフェニルホスフィンやトリシクロヘキシルホスフィンを用いることで、高活性かつ実用的な触媒系の構築に成功した。本触媒系はジオキサン中還流条件下(101℃)、芳香族および脂肪族アルデヒドの脱カルボニル化反応に対し高い触媒活性を示す。さらに幅広い官能基許容性を有しており、従来のロジウム触媒系では達成困難であったニトロ基を有するアルデヒドに対しても有効である。本系は空気下においても不活性ガス雰囲気下と同程度の活性を示すことが明らかとなり、より汎用性の高い触媒系の開発に成功した。速度論的同位体効果の研究から、今回開発したイリジウム触媒が従来のロジウム触媒を用いたアルデヒドの脱カルボニル化反応と同様の機構を経ていることが示唆された。今後、さちなる高活性触媒の開発と反応機構の解明を行う。
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