2009 Fiscal Year Annual Research Report
多置換型芳香族化合物を用いた新規分子触媒の合成と反応開発
Project/Area Number |
08J01828
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩井 智弘 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イリジウム / 酸塩化物 / 末端アルキン / 付加反応 / フラン / 含窒素複素環カルベン / リン配位子 |
Research Abstract |
均一系遷移金属触媒において配位子は触媒の立体的かつ電子的性質を制御する重要な要素である。用いる中心金属によりその反応性が大きく異なるため、適切な金属と配位子の組み合わせにより高活性な触媒が生み出される。私は多置換型芳香族化合物を用いた新規配位子の合成と触媒反応への応用を目的とし、より高活性な触媒系の構築を目指して本研究に着手した。その結果、イリジウム触媒を用いた酸塩化物の末端アルキンへの付加反応が効率良く進行することを見出した。本反応はカルボニル基のみならず有機合成価値の高いクロロ基を同時に導入可能であるため、原子効率に優れた有用な反応である。これまでに報告のあるロジウム触媒系では酸塩化物からの脱カルボニル化反応が容易に進行することが知られている。また近年、同じくロジウム触媒系を用いることで脱カルボニル化を抑制した付加反応も報告されているが、適用可能な酸塩化物類は限られていた。私は嵩高い含窒素複素環カルベン配位子(IPr)を有するイリジウム錯体が、種々の芳香族酸塩化物の末端アルキンへの付加反応において高い位置および立体選択的に進行することを明らかとした。さらに配位子としてリン配位子(RuPhos)を有するイリジウム錯体を用いたところ、一酸化炭素の脱離を伴った付加反応が選択的に進行することも見出した。両者の違いを錯体化学の面から考察し、各イリジウム錯体と酸塩化物との反応性の差が触媒反応に大きな影響を与えていることが分かった。さらに前者の反応は2,5-二置換フラン誘導体の合成に応用することにも成功した。今後、さらなる高活性触媒の開発と新規分子変換反応の探索を行う。
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