2008 Fiscal Year Annual Research Report
樹木の存在に起因する不均質な雨水浸透現象が斜面表層崩壊に及ぼす影響
Project/Area Number |
08J01830
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梁 偉立 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 森林水文 / 樹幹流 / 雨水浸透 / 基岩面飽和帯 / 土壌含水率 / 数値計算 |
Research Abstract |
落葉樹林における雨水浸透特性を把握するために,ヒメシャラ一個体を対象として,その尾根側と谷側の土壌水分と基岩面の間隙水圧を詳細に観測した。樹木の谷側における含水率が大きく増加し,鉛直に不規則な分有が観測された。それは,幹の谷側部に集中した樹幹流が根系を伝うバイパスフローになった結果だと考えられる。一方,尾根側では,土壌水分動態が浸潤前線のゆっくりした下降に左右された。幹の谷側に集中した樹幹流が迅速に土壌に浸透したため,基岩面に局所的な飽和帯を発生させた。間隙水圧の上昇パターンが単に樹木との距離だけではなく,樹木の尾根側と谷側において大きな違いを示した。観測で得られた知見に基づき,樹本の存在に起因する不均質な水移動を考慮できる3次元雨水浸透モデルを構築した。これまで開発された多くの水文モデルでは,遮断量と通過雨量の降雨分配が考慮されてはいるか,樹幹流が無視されるか,あるいは林内雨量の一部として扱われることが多かっか。そこで,従来型のモデルと提案モデルで計算を行って結果を比較した。樹幹流浸透特性を考慮していない従来型モデルは,ゆっくりした浸潤前線の下降を示し,尾根側と谷側の空間変動を再現できなかったばかりでなく,基岩面飽和帯の発生が見られなかった。この結果により,従来の水文モデルに大きな誤差が含まれていることが指摘できる。提案したモデルは,樹幹流に基づく土層内のバイパスフローを土層内における湧き出し項としてRichards式に代入した点で新しい手法である。その計算結果は,土壌含水率変化と基岩面飽和帯の発生を良好に再現するものであった。樹木周辺の土壌水分動態を再現するためには,このようなモデルが有効である事が明らかになった。
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Research Products
(5 results)