Research Abstract |
本年度は,(1)含水ケイ酸塩を溶融可能な高温条件下での弾性波速度測定技術の開発.(2)メルトをカプセルに封入した状態での弾性波速度測定技術の開発を行った.(1)においては,高圧実験セル内部に断熱の良いジルコニアを用いて,高温高圧発生実験のテストを行った.さらに,弾性波を伝搬させるためのロッドを,これまでの研究で用いていたアルミナから断熱の良いジルコニアに変更して弾性波測定実験を行った.その結果,最高1700℃条件下において弾性波測定を行うことに成功した,この温度は,上部マントル圧力条件下において含水ケイ酸塩を溶融させることが可能な温度であり,この測定技術を用いることにより,含水ケイ酸塩を溶融させた状態での弾性波速度測定を行うことが可能になると考えられる.そこで,この技術を用いて,さらに(2)のメルトをカプセルに封入した状態での弾性波速度測定技術の開発を行った.その結果,圧力約5GPa,温度最大1600℃条件下において,MORB組成メルトをBNカプセルに封入した状態での弾性波測定を行うことに成功した.MORB組成が溶融を開始する約1400℃以上の高温条件下において,試料の溶融とともにS波信号は消滅した.一方,P波信号は強度が弱くなるが,最大1600℃まで信号は観察され,その伝搬時間が非常に遅くなる現象が観察された.このような高圧条件下における溶融した岩石の弾性波測定は世界でも初めての実験であり,観測されている地球内部の地震波速度低速度異常を理解するために必要なマグマやそれを含む部分溶融した岩石の弾性波速度の解明に大きく貢献すると考えられる.
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