2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J01886
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 達也 Kyushu University, 大学院・人間環境学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 植民地教育史 / 朝鮮教育史 / 教員の存在様態 / 教員養成 / 師範学校 / 植民地近代 |
Research Abstract |
2008年度は、日本の旧植民地における教員の存在様態を複眼で以て捉える作業に必要な、植民地教育史関係(特に朝鮮関係)の史料収集に努めた。具体的には韓国の国立国会図書館や国立中央図書館、国会記録院、各大学の附属図書館、台湾の国立文献館、台湾大学において行なった。その結果、植民地朝鮮における教員試験に関する史料や、女性教員大会史料、教員の思想問題関係史料、台湾から朝鮮に派遣された教育視察団関係の史料など、多数の新史料を発見・収集した。 これらの史料をもとに、今年度発表したおもな研究成果は以下のとおりである。 (1)これまで師範学校での養成に関心が偏りがちであった植民地教員の確保形態に関する論文を執筆した。具体的には、朝鮮で行なわれていた教員試験の実施形態、回数、合格者、受験者の体験・属性、試験の機能(不足教員の補充と現役教員の質向上)を明らかにし、これまで見落とされてきたルートでの教員確保の実態に迫った。 (2)教員社会における性差についての論文を執筆した。これは、性という観点から植民地教員社会の実態を明らかにしたものである。男性教員と女性教員は、教員という同じ立場であっても、待遇、役割、意識の面であらゆる相違を有していたことを具体的に明らかにした。 (3)調査で発見した教員の思想問題に関する史料をもとに、アジア教育学会の大会で口頭発表を行なった。日本からの独立企図や、抗日運動、民族意識昂揚運動に携わった教員の記録や処遇について明らかにした。特にこれらの成果は、これまで植民地教育の忠良な担い手として描かれてきた教員像とは明らかに異質なものであり、植民地教員の位置づけに関するこれまでの議論に新たな視角を提示するものである。
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Research Products
(5 results)