2010 Fiscal Year Annual Research Report
染色体複製ライセンス化機構の解析-多要素制御系への実験的アプローチ-
Project/Area Number |
08J01918
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大出 晃士 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 染色体複製 / 複製ライセンス化 / フィードバック制御 / Mcm2-7複合体 / Cdt1 / geminin / all-or-none / アフリカツメガエル |
Research Abstract |
本研究は染色体複製のライセンス化の実体であるMcm2-7複合体の染色体への結合に必要な因子ORC, Cdc6, Cdt1と、その阻害因子gemininの働きを解明することを目的としている。これまでに、ライセンス化阻害がある閾値geminin濃度で急峻に生じるスイッチ型を示し、この際染色体上Cdt1がfociを形成することを見出した。これらの結果から、染色体の近傍に位置する複数のORC-Cdc6-Cdt1複合体が集積し、互いに抑制を強め合うフィードバック効果が生じている可能性を考えた。本年度はこれを検証するために、複合体間での相互作用を空間的に表現する数理モデルを構築した。その結果、隣接した阻害型複合体間が阻害状態を互いに安定化することで、スイッチ型の阻害活性が誘起されることが確かめられた。さらに複合体間相互作用存在下では、阻害型もしくは活性型の同状態の複合体同士が隣接する確率が上昇することが予測された。ライセンス化された複製開始点の分布を実験的に測定した結果、gemininを用いて部分的にライセンス化を阻害した際に、隣接する複製領域間の距離の分布に顕著な変化は認められず、活性型複製開始点が隣接する傾向にあることを示唆する。また生化学的な解析から、gemininは複数のCdt1分子間に相互作用を誘導することが解った。これらの結果からgemininが隣接する複数のORC-Cdc6-Cdt1複合体を協同的に阻害し、それによりスイッチ的なライセンス阻害活性が生じるモデルを提唱した。これまで、厳密なライセンス化阻害には複数の機構による多重な抑制することが必要であると考えられてきたが、今回提唱するモデルは、阻害された染色体領域が相互に抑制効果を増強し合うことで厳密なライセンス化阻害を保証する、新たな戦略を提示するものである。
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Research Products
(3 results)