2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02000
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
中村 綾乃 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | ナチズム / 在外ドイツ人 / 非ヨーロッパ / 引揚 / 非ナチ化 |
Research Abstract |
社会史研究の流れとその今日的な到達点、政治外交、軍事史の先行研究の成果を踏まえ、「日常生活史」の手法を用い、東アジア、オセアニア、中東、南西アフリカ、南米のドイツ人社会におけるナチズムの成立とその浸透を、人々の主体的な経験や社会的実践から比較分析していく。従来研究では、別個の研究領域として論じられてきた政治外交史と社会史、地域研究との接合を試みることで、立体的、かつ複眼的なナチズム像の構築を試みる。 まず、当該課題に関連する最新の先行研究と研究動向を踏まえる。最近のヨーロッパ史研究では、国民国家の歴史や「ヨーロッパ史優位」の歴史叙述から、非ヨーロッパ世界の「他者」およびその表象を視角とした研究成果が出されている。たとえば、トランスナショナルな視点を導入し、ドイツ植民地体制の比較研究、非ヨーロッパ人の表象、そして「世界の一体化」やグローバリゼーションの歴史である。このような研究成果を踏まえ、ビスマルク時代以降の植民地、ドイツ系移民や在外ドイツ人の存在、第一次世界大戦後と第二次世界大戦後の二度の引揚げについて、トランスナショナル視点を取り入れながら、分析していく。また在外ドイツ人や植民地の存在が本国のドイツ社会にどのような変容をもたらしたのかという「反作用」について、国籍法や婚姻法、学校制度、引揚の問題から検討を加える。国立国会図書館憲政資料室(東京)、米国国立文書館(ワシントンD.C.)所蔵の「ドイツ押収文書」から、在外ドイツ人の戦犯護送、身元調査、資産管理と本国送還に関する指令文書を抜粋し、在外ドイツ人の「非ナチ化」政策の評価を検討する。関係者への聞き取り調査を行い、証言や回想を収集し,職業や世代や社会的階層、地域による記憶のあり方の違いを比較分析する。 これらの研究成果は、国際学会等の報告と論文発表を通じて、すみやかな公開につとめる。
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Research Products
(3 results)