2008 Fiscal Year Annual Research Report
バッタ類の相変異:密度依存的産卵能力の制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
08J02008
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
前野 浩太郎 National Institute of Agrobiological Sciences, 昆虫-昆虫・植物間相互作用研究ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | サバクトビバッタ / バック / 相変異 / 産卵能力 / 卵 / 突然変異体 / 体色 / トレードオフ |
Research Abstract |
バック類はしばしば大発生し、農作物に甚大な被害を与える害虫である。彼等は「相変異」という他の昆虫では見られない特殊な多型現象を示すが、これは混み合いに伴い悪化した生育環境から逃れ、新たな好適な生育・繁殖場所に辿り着くための適応能力として捉えられてきた。しかし、今年度の研究により、実はサバクトビバックは混み合った条件下で育つと、生物がとらわれている資源分配の法則の制約を回避し、早く、大きな成虫になる能力を持つことを発見した。しかも、大きな成虫になるほど、一卵塊当たりのバイオマス自体を増加させ、大きな卵を多く産む能力を持つことが分かった。本研究より明らかになったサバクトビバッタの相変異能力は、移動分散に貢献するだけではなく、大発生時における急激な個体群の増加に貢献していると考えることができ、相変異研究に新たな概念を付け加えるものだと思われる。 サバクトビバッタは低密度下では、小さな卵を産むが、高密度下では大きな卵を産む。小さい卵からは緑色の幼虫が孵化してくるが、大きなものからは黒い幼虫が出現する。これまで、バックは生涯似たような大きさの卵を産み続けると考えられてきたが、実は密度依存的に卵サイズを切り替え、異なるタイプの孵化幼虫を生産できる能力を持つことを発見した。 孵化幼虫の体色多型の制御に卵鞘の泡に含まれるフェロモン様物質が関与していることをイギリスのオックスフォード大学の研究グループが発表しており、すでに多くの教科書や総説で彼等の「泡説」が紹介されている。しかし、我々は実験的にそのような事実は無く、彼等のサンプリングエラーが原因である旨を報告した。
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[Journal Article]2008
Author(s)
田中誠二, 前野浩太郎
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Journal Title
耐性の昆虫学(編;田中誠二, ほか)東海大出版(サバクトビバッタの相変異:混み合いに対する反応)
Pages: 254-268
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