2009 Fiscal Year Annual Research Report
バッタ類の相変異:密度依存的産卵能力の制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
08J02008
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
前野 浩太郎 National Institute of Agrobiological Sciences, 昆虫-昆虫・植物間相互作用研究ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | 相変異 / サバクトビバッタ / 表現型多型 / 生理学 / 体色 / 混み合い / ホルモン / 孵化幼虫 |
Research Abstract |
本研究は、バッタ類の相変異メカニズムの解明を目指し、特に生理学的アプローチにより、1)世代内の変化を制御する仕組み及び、2)母親による子の形質を決める仕組みの解明という異なったタイムスパンにおける相変異形質の発現メカニズムを明らかにすることを主目的とした。 1)孵化幼虫の大きさは母親の成虫期の密度の影響を受け、低密度下では小型の幼虫が、高密度下では大型の幼虫が生産される(Hunter-Jones,1958)。孵化時の大きさと飼育密度の組み合わせが成虫形態にどのような影響を及ぼすのか調査したところ、単独飼育した小型の幼虫が最も孤独相的であり、逆に集団飼育した大型の幼虫が最も群生相的な成虫形態を示すことが分かった。つまり、親世代と子世代の混み合いがある条件で組み合わさった時に相特異的な形質が強く発現するという証拠を得た。 2)メス親は、混み合いに応じて卵サイズを変化させ、変化した密度に応じて異なったサイズの卵を速やか生産し始めるということを明らかにした。現在、混み合いの感受システムを明らかにするために、感受部位の特定を行っている。また、卵を小型化させる効果を持つと報告されていたJHの役割について詳しく調査し、JHが卵サイズ制御に直接関与していないことを示す実験的証拠を提出した。 黒化の程度が異なる2種類の体色突然変異体を用いることで、孵化幼虫の体色発現には、1)色素発現の有無、2)メラニン化の程度に関与する遺伝子の2つが関係していることが分かった。さらに2種類の体色突然変異体は、黒化誘導するホルモンであるコラゾニンの合成・分泌経路に突然変異が起きたと考えられる結果が得られた。群生相の黒い幼虫を生み出すはずの大型の卵に針で穴をあけて卵黄を除去し、人為的に小型化すると、孤独相的な緑色の体色の孵化幼虫が出現することを発見した。この結果は、胚が使用可能な卵黄量に応じて孵化後の体色を制御している可能性を示唆するものであると考えられる。
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