2008 Fiscal Year Annual Research Report
人為的撹乱に強い種は弱い種の生態的機能を代替できるのか?-種子散布に関して-
Project/Area Number |
08J02016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中島 啓裕 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 種子散布 / 人為的撹乱 / 熱帯雨林 |
Research Abstract |
東南アジアの熱帯雨林では、生息地の破壊、狩猟などによって、多くの野生動物が急速に個体数を減らしている。特に大型果実食動物はこれらの人為的撹乱に対して脆弱であることが知られる。大型果実食者は、特に大型種子を持つ植物の限られた種子散布者として重要な機能を担っており、その減少、局所的絶滅は、これらの植物の更新過程にも大きな影響を与えると予想されている。本研究では、これがどの程度深刻な事態かを明らかにするために、人為的撹乱に耐性を持つ種パームシベットが、脆弱な大型果実食者の果たす機能をどの程度代替できるのかについて明らかにすることとした。本研究では特に、1.パームシベットが運ぶ植物種、2.その散布距離、3.散布後の環境の3点に注目し、パームシベットの散布者としての質を定量的に明らかにすることとした。1年半以上にも及ぶフィールドワークの結果、1.パームシベットは非常に大きな種子を運ぶことができること、しかし特定の植物種のみを集中的に散布すること、2.散布距離は非常に長く数百メートルに及ぶこと、3.他植性から離れた裸地に散布する習性があり、そこでの生存は植物種によって異なることが明らかにされた。これらのことから、パームシベットは、散布者の限られたいくつかの大型種子植物の散布には寄与しうるが、すべての植物種にとって等価な機能を果たすわけではないといえる。この結果は、脆弱種にしか果たせない機能があることを示した点で、撹乱体制下の果実果実食者関係に新たな知見をもたらしたといえる。
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