2008 Fiscal Year Annual Research Report
太陽光を用いる水の完全分解のための色素増感型光触媒の開発
Project/Area Number |
08J02036
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
萩原 英久 Kyushu University, 大学院・工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 金属酸化物光触媒 / 水の光分解反応 / 色素増感 / 電荷移動 / ポルフィリン / タンタル酸カリウム |
Research Abstract |
従来の研究で、紫外光下で水の光分解活性を示すKTaO_3をポルフィリン系色素で修飾すると、活性が向上することを見出した。本研究では、この色素増感型光触媒の可視光応答化を試みるとともに、電荷移動過程の解明や色素の複合による活性向上について検討した。 1可視光応答化:KTaO_3に変えてバンドギャップの小さな金属硫化物を用い、可視光水分解を検討した。水の光分解反応は進行しなかったが、色素修飾金属硫化物光触媒は犠牲剤水溶液からのH_2生成反応に高い活性を示した。色素修飾SnSの光触媒活性は色素が吸収帯を有する波長域で向上しており、色素の光吸収・励起が光触媒反応に関与していることを明らかにした。 2電荷移動過程の解明:蛍光分光法で励起エネルギーの消滅過程を調べた結果、KTaO_3のフォトルミネセンスは色素修飾により減少し、色素の蛍光もPt助触媒の担持で減少した。Nd:YAGレーザーの2倍波と4倍波を励起光に用いて光起電力の過渡応答を測定したところ、電荷分離状態にあるKTaO_3の表面上の色素に2倍波を照射することで、KTaO_3の電位は増加した。さらに、KTaO_3を色素修飾すると数百μsを越える電荷分離状態が観測されたことから、色素修飾KTaO_3中の電荷移動機構は植物の光合成に類似した二段階励起であり、KTaO_3の励起電子が色素へ移動することで電荷分離が達成されていると推定される。 3色素の複合による活性向上:色素の複合により色素修飾KTaO_3の水分解活性は大きく向上した。XPSスペクトルからは色素の中心金属間の電子的相互作用が観測され、複合により色素中の電気伝導度は向上した。さらにKTaO_3の電荷分離状態は色素の複合で長寿命化したことから、KTaO_3から色素に注入された励起電子が色素の複合によって拡散しやすくなることで、光分解活性は向上したと考えられる。
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