2008 Fiscal Year Annual Research Report
平和構築の歴史・思想的源流-国際連盟における委任統治システムの研究
Project/Area Number |
08J02066
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
五十嵐 元道 Hokkaido University, 大学院・法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 信託統治 / 国際連盟 / スマッツ / ホブソン / 平和構築 / 委任統治 / 帝国 / グローバル・ガバナンス |
Research Abstract |
1、日本における平和構築研究はこれまで冷戦後の国連などによる平和構築活動の事例分析に止まっていた。しかし平和構築をめぐっては、近年、欧米においてその前例を戦間期にまで遡って研究する潮流が強まっている。本研究はそうした最新の研究潮流の実情を明らかにした。 2、そうした研究状況を踏まえ、本研究は平和構築を歴史的に研究すべきく、以下のようなアプローチを提示した。まず平和構築を「国際組織による統治」(本研究はそれを「国際信託統治」と呼ぶ)として捉え直し、その「国際組織による統治」の歴史の大まかな全体像を明らかにした。その上でその統治の性質が根本的に変化した幾度かの転換点を今後の分析対象とすることを課題としてあげ、本研究はその基礎研究として「国際組織による統治」の起源と考えられる第一次大戦前後の「国際組織による統治」の性質について分析を行ってきた。その際、そうした歴史を分析するための理念型を設定した。 3、以上の分析の結果、第一次大戦の前後の時期に案出された「国際組織による統治」(国際信託統治)の構想は、(A)アフリカをめぐる国際信託統治と、(B)王朝・家産帝国をめぐる国際信託統治に大別できることが明らかとなった。(A)は主にイギリスの左派(特にJ・A・ホブソン)によって唱えられ、(B)は南アフリカの政治家、J・C・スマッツによって唱えられた。(A)の構想は、南アフリカ戦争、コンゴ自由国でのネイティブの虐待などのスキャンダル、そして第一次大戦によって植民地帝国秩序の欠陥が明らかになるなか、その代替的国際秩序として生成、発展した。他方、(B)の構想は、第一次大戦に際して崩壊し、ヨーロッパ全体の秩序を不安定化させる原因と考えられたハプスブルク帝国などの王朝・家産帝国に対する代替秩序として登場した。その際、南アフリカ戦争を契機に再解釈されたイギリス帝国秩序(コモンウェルス)が参考にされた。
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Research Products
(5 results)