2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02093
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小沼 順二 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 適応放散 / 特殊化 / 種分化 / オサムシ / 陸貝 / トレードオフ / 量的遺伝 |
Research Abstract |
近縁種間にみられる形態の不連続性の説明として、進化生態学者らは選択と適応に関するメカニズムの重要性を主張する一方、形態形成の遺伝基盤に携わる研究者らは遺伝・発生的制約が著しい形態差異を導く可能性を示唆してきた。近縁種間の形態分化機構において「選択」と「制約」はどちらがより強く寄与し得るのだろうか。本研究は、この問題の解明のために貝食性オサムシの形態分化に着目した。貝食性オサムシでは「巨頭型」・「狭頭型」という形態的二型と「殻を壊す」・「首を突っ込む」という行動的二型が存在する。先行研究では巨頭型オサムシは殻を壊す行動への適応、そして、狭頭型オサムシは首を突っ込む行動への適応という仮説を支持する結果を得ることができたが、対立仮説として、形態や行動の遺伝基盤が中間型それ自体を生み出さない特殊な構造を担っている可能性も考え得る。そこで本研究では代表的貝食性オサムシであるマイマイカブリを用い、陸貝食に関わる捕食形態及び捕食行動の遺伝的基盤の解明を行った。巨頭マイマイカブリと狭頭マイマイカブリを親集団としたF1雑種集団の形態はそれぞれの親集団の中間的なものとなり、また、戻し交雑集団の形態はF1雑種集団と親集団との中間的なものとなった。量的遺伝解析の結果、形態を決める相加的遺伝子座は少なくとも3つ以上存在することがわかり、同一遺伝子座内のアレル相互作用(優性)や遺伝子座間の相互作用(エピスタシス)といった遺伝要因はほとんど影響を与えていないということがわかった。これらの結果は、貝食性オサムシの形態的不連続性において遺伝的制約よりも捕食行動への選択圧が著しく寄与している可能性を示唆しているといえる。
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Research Products
(1 results)