2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規TGF-βシグナル抑制分子TMEPAIの発癌における作用
Project/Area Number |
08J02095
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡邊 幸秀 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | TGF-βシグナル / 発癌 |
Research Abstract |
申請者は、TGF-βシグナルによって発現が誘導される遺伝子として同定したTMEPAI(Transmembrane prostate androgeninduced-RNA)の機能解析について研究を行っている。TMEPAIは、様々な癌組織において発現が亢進していることが報告されている。しかし、その機能については不明な点が多い。 始めに、培養細胞を用いてTMEPAIを過剰発現させたときの機能について検討したところ、TMEPAIはTGF-βシグナルを抑制することを明らかにした。そのメカニズムは、TMEPAIがTGF-βシグナルの伝達分子であるSmad2/3を捕捉し、シグナル伝達に必要なSmad2/3のリン酸化を抑制することであることを見出した。また、TMEPAIをRNAiによってノックダウンした時には、TGF-βシグナルの増強がみられることからも、TMEPAIがTGF-βシグナルのネガティブフードバック分子として機能していることが示された。 TGF-βは、多くの細胞に対して増殖の抑制作用を持つことが知られている。また、分化の誘導や運動能の亢進、血管新生の誘導、免疫機能の抑制にも関与することが明らかになっている。癌細胞ではTGF-βシグナル伝達経路に異常が生じることによって細胞増殖の抑制がかからなくなっていることや、癌の進展においてはTGF-βによる運動性の亢進や免疫機能の抑制、血管新生の誘導によって癌の浸潤、転移を促進することが報告されている。よって、癌細胞で発現が亢進しているTMEPAIはTGF-βシグナルを抑制することで癌の発生や悪性化に関与している可能性が示唆された。そこで、現在はTMEPAIノックアウトマウスを作製し、発癌物質の投与によって生じる腫瘍の発生・悪性化に対するTMEPAIの影響を検討することや、TMEPAIをノックダウンした癌細胞をヌードマウスに移植した時の腫瘍形成や転移に対する影響を検討している。さらに、TMEPAIが様々な癌細胞で発現が上昇していることからTMEPAIが新たな腫瘍マーカーとして有用なのではないかと考え、TMEPAIのモノクローナル抗体の作製にも着手している。
|
Research Products
(3 results)