2009 Fiscal Year Annual Research Report
パルス中性子トモグラフィの開発によるマテリアル研究の新展開
Project/Area Number |
08J02121
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 博隆 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 中性子 / イメージング / 加速器 / 非破壊検査 / 集合組織 / 微細組織 / ひずみ / 材料研究 |
Research Abstract |
従来の原子炉定常中性子源ではなく、加速器パルス中性子源を利用することで、物体内部の「物理量」を非破壊的に可視化することができるパルス中性子透過分光イメージング(ラジオグラフィ・トモグラフィ)法に関する開発研究を進めている。最終的には、全科学技術分野の根幹でもあるマテリアルサイエンスへの貢献を目指している。 今年度の成果は、低エネルギー中性子のブラッグ散乱(回折)を利用したブラッグエッジ透過分光イメージングを材料研究法として実用化したこと、その研究過程においてブラッグエッジ透過率パターンから抽出できる情報量が飛躍的に増えたこと、さらにその情報の質が他の材料研究法(電子後方散乱回折、X線回折、中性子回折など)と同等になったこと、しかもバルクの結晶組織情報の実空間分布を一度に可視化できたことでその優位性が実証できたことである。具体的には、かなりの弱線源である北海道大学45MeV電子線形加速器施設のパルス冷中性子源を利用して、一般構造用圧延鋼SS400(α-Fe)のバルクの集合組織と微細組織の分布を、0.1mという広い範囲にわたって空間分解能800μmで定量的に可視化できたことである。定量的可視化には、前年度開発したブラッグエッジ透過率パターン解析ソフトウェアが必要不可欠であった。前年度までは集合組織の発達の程度を識別する程度だったが、今年度の継続的な実験的・解析的研究により、回折法による集合組織測定の際に行われる回転測定を全く行わなくても各中性子透過方向に配向している結晶面を特定することができた。また、結晶子内多重回折の評価による結晶子サイズ(微細組織)測定が新たに可能となった。別の実験では、透過イメージング法と回折法のひずみ測定にはそれぞれ得手不得手があることがわかり、目的に合わせて使い分ける基準が明確化できた。これらバルク情報を可視化できるようになったことは、マテリアルサイエンスが現在求めている要求の一歩先の要求を満たしたことになり、非常に大きな進歩である。
|
Research Products
(10 results)