2009 Fiscal Year Annual Research Report
左右非対称性の共進化:捕食者-被食者間相互作用による種分化機構の解明
Project/Area Number |
08J02138
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
細 将貴 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 行動生態学 / は虫類 / カタツムリ / 琉球列島 |
Research Abstract |
これまでの研究により,イッシキマイマイは尾部を自切することによってイワサキセダカヘビの捕食を回避することができること,および,その結果として尾部に再生痕をもつ個体が野外で頻繁に見られることがわかっている。そこでイッシキマイマイの野外個体群における自切痕の頻度と体サイズ分布からイワサキセダカヘビによる捕食圧を推定することを目的として,西表島において四期のべ72日間に及ぶ野外調査を実施し,カタツムリの標識再捕獲をおこなった。今回の調査により,イッシキマイマイの自切痕頻度の高さと移動性の低さが再確認された。さらに,成熟までにかかる期間がおよそ1~2年であること,繁殖期が夏であること等の生活史の多くがあきらかになった。そして得られた再捕獲データから最尤推定した結果,死亡率は0.2%/日,再捕率は3%/調査日と考えられることが判明した。今後,より詳細にデータを解析し,当初の目的を達成する予定である。またイッシキマイマイの成長速度に自切がどのように影響するかを室内実験によって調べた。その結果,自切した個体では殻の成長速度が鈍化し,摂取した資源を尾部の再生に投資していることがあきらかになった。また,エサの選好性がカルシウム含有量の多いものから炭水化物含有量の多いものにシフトすることがわかった。これは,尾部の再生には殻の成長ほどにはカルシウムを必要としないためであると考えられる。このことは,自切という非致死的な捕食の結果が,低次消費者の生態系機能を改変させうることを意味する。
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Research Products
(10 results)