2008 Fiscal Year Annual Research Report
ミシェル・アンリの哲学の〈通時的〉解釈を手がかりとした「倫理」の研究
Project/Area Number |
08J02139
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古荘 匡義 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ミシェル・アンリ / 現象学 / フランス / 宗教哲学 |
Research Abstract |
本研究の課題は、「生の現象学」に基礎づけられたミシェル・アンリの経済思想を解明した上で、現代の経済学と比較・検討することにより、現代の経済的諸問題を根本的に、「倫理」的に問い直す視座を獲得することにあった。修士論文において、ミシェル・アンリの現象学から彼の経済思想を再構築する作業を行った。それをもとに、平成20年度は現象学および経済学の古典を改めて読み直し、自らの研究課題の射程を再確認した。とりわけ、平成21年度の研究でアンリのマルクス解釈を重点的に取り上げるために、マルクスの著作および国内外のマルクスに関する先行研究を精読した。アンリの現象学を通してマルクスを再読することによって、アンリがマルクスに読み取ろうとしたものと、アンリが意図的に読み取らなかったものとを認識することができた。アンリは、マルクスの生きた労働の思想を主体的・根源的生の哲学として純化するのだが、その際、マルクスにおいて重要な問題となる階級闘争や歴史、経済的な価値の問題を、生とは無縁のイデオロギーとして排除してしまう。この主張はマルクスの思想と大きく異なるだけでなく、アンリ自身のマルクス解釈を矛盾に満ちたものにしている。この矛盾をきちんと跡付けることによって、アンリのマルクス解釈および経済思想の適正な測定が可能となる。 当然ながらアンリの著作も研究した。修士論文の成果を発展させて、アンリ自身も明確にしていない、彼の経済思想を可能にしている概念を「生-の-世界」の概念に見出した。この概念の解明を論文と学会発表にて公表した。この成果は平成21年度のアンリのマルクス解釈に関する研究のための基盤となる。 また、ミシェル・アンリの論文集、『現象学について』〈De la phenomenologie(Phenomenologie de la vie,Tome I),Paris,PUP,2003.〉の翻訳に携わった。翻訳はほぼ完成しているが、残念ながら平成20年度中に出版することができなかった。平成21年度中には刊行できるものと思われる。
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Research Products
(3 results)