2009 Fiscal Year Annual Research Report
ミシェル・アンリの哲学の<通時的>解釈を手がかりとした「倫理」の研究
Project/Area Number |
08J02139
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古荘 匡義 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ミシェル・アンリ / 現象学 / フランス / キリスト教 / 宗教哲学 / 実践 |
Research Abstract |
前年度の研究では、ミシェル・アンリの中期思想において登場する実践の概念を、前期思想との関係において解明したが、本年度は、彼の後期思想、いわゆる「キリスト教の哲学」における実践の概念を研究した。この二年間の研究によって、彼の思索全体における実践の概念の役割を通時的に考察することが可能になった。 「キリスト教の哲学」が問題にするのは「生」の概念である。生ける者の生は思惟によっては捉えることができず、ただ情感的な自己体験によって感得することしかできない。さらに、生ける者は絶対的<生>によって生が与えられることによって生ける者となるが、この生ける者は、自らを生ける者とする絶対的<生>を思惟によって知ることができず、行為の中で実践のレベルで体験することによって絶対的<生>を根源的に覚知する。このように、「キリスト教の哲学」にとって、実践の概念は重要な役割を担っているのだが、さらに、このようなアンリの思索そのものが思惟によって把握不可能な生を哲学することであるのだから、アンリが本来表現したい生を十全に表現するためには、思惟不可能な生についての哲学という次元を越えて、哲学の営為そのものが実践の次元に開かれている必要がある。つまり、「キリスト教の哲学」が自らの思想の内容を体現するため必要なのは、アンリの思索を読む者が、読むという営為を通して実践のレベルで変容し、絶対的<生>を根源的に覚知した状態で行為することなのである。このように、実践の概念は、「キリスト教の哲学」の内容の次元だけでなく、「キリスト教の哲学」そのものを完結させるという次元においても重要な役割を担っている。 本年度は研究発表の成果こそ少なかったが、本年度の研究は来年度に投稿論文や口頭発表を通じて公表する予定である。さらに本年度の研究は、来年度提出予定の博士論文の核心を形成することになるだろう。
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Research Products
(1 results)