2008 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫応答を制御する免疫受容体MAIR-IIの機能解明
Project/Area Number |
08J02169
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
戸塚 直也 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Toll-like receptor / 敗血症 |
Research Abstract |
自然免疫応答は、感染防御機構の最前線で働き、さらに抗原特異的な獲得免疫応答を誘導する重要なシステムである。MAIR-II(CD300d)は、自然免疫応答で働く好中球、マクロファージ、樹状細胞に発現する受容体であるため、自然免疫応答の活性化に重要な役割を有していることが考えられる。本研究では、自然免疫応答の活性化制御機構におけるMAIR-IIの役割を解明することを目的として、MAIR-II遺伝子欠損マウスを作製し、感染症モデルについて検討した。自然免疫応答の活性化には、Toll-like receptor(TLR)が重要な働きを有しているため、TLR4のリガンドであるLPSの投与による敗血症モデルを検討したところ、野生型マウスは投与後24時間で全例死亡するのに対し、MAIR-II遺伝子欠損マウスは全例生き残り、生存率が亢進するという結果を得た。敗血症の死因の一つに炎症性サイトカインの過剰産生があることから、LPS投与後の血漿中炎症性サイトカインの量を測定したところ、野生型マウスに比べ、MAIR-II遺伝子欠損マウスでは有意に低下していた。そこで、MAIR-II陽性細胞のうち、炎症性サイトカイン産生に働く好中球および腹腔マクロファージを、in vitroでLPS刺激したところ、MAIR-II遺伝子欠損マウス由来の好中球および腹腔マクロファージの炎症性サイトカインの産生量は有意に低下していた。このことから、MAIR-IIはLPSによる炎症性サイトカイン産生を増幅することが示され、TLR4のシグナル伝達経路を正に制御することが示唆された。そこで、MAIR-IIによるTLR4シグナル増幅の分子機構について検討するため、TLR4の下流で炎症性サイトカイン産生に働くMAPKとNF-κBの活性化を比較検討したところ、NF-κBの活性化はMAIR-II遺伝子欠損マウス由来の好中球において低下していた。次に、MAIR-IIの下流で働くSykの活性化を検討するため、LPS刺激による炎症性サイトカイン産生の系をSyk阻害剤存在下で検討したところ、野生型およびMAIR-II遺伝子欠損マウス由来の好中球共に炎症性サイトカイン産生が低下した。SykがMAIR-IIおよびTLR4の下流で働くことを示唆していることから、MAIR-II遺伝子欠損マウス由来の好中球では、LPS刺激によるSykのリン酸化が減弱することが予想される。以上のことから、MAIR-IIは、TLR4シグナル伝達経路においてSykを介してNF-κBの活性化および炎症性サイトカイン産生を増幅することが示唆された。
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Research Products
(1 results)