2008 Fiscal Year Annual Research Report
フーリエ制限法による非線形分散型偏微分方程式の適切性の解明
Project/Area Number |
08J02196
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸本 展 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非線形シュレディンガー方程式 / KdV方程式 / 初期値問題の適切性 / フーリエ制限法 |
Research Abstract |
本研究では,非線形分散型偏微分方程式の初期値問題の適切性を考えるにあたり,現在広く研究が行われているフーリエ制限法に方程式の非線形相互作用に基づく改良を加えることにより,通常のフーリエ制限法では適切性が得られない弱い関数空間に属する初期値を扱う.2008年度は非線形シュレディンガー方程式およびKdV方程式について研究した.まず非線形シュレディンガー方程式に関して,前年度までの2次の非線形性に対する空間1次元および2次元の時間局所適切性の結果において,解の一意性の主張を改善した.即ち,これまでは「滑らかな解の極限として一意に定まる関数に一致する」という独特の弱い意味での解釈であったのに対し,解が一意であるような関数空間を与えるという強い意味での一意性を示した.また空間1次元の場合は一部の3次の非線形性や周期境界条件下での初期値境界値問題の適切性についても同様の手法が効果的であることを示した.さらに空間2次元の結果を示す際に用いる評価式は3次の非線形性の場合の滑らかな大域解の時刻無限大での増大評価に応用できることが分かっており,通常のフーリエ制限法により導かれる増大度を改善することができた.このような3次の非線形性は物理的観点からも重要であり,今回得られた増大評価をさらに改善できるかどうかは今後研究されるべき課題である,一方KdV方程式に関しては,初期値の属するソボレフ空間の指数sがs>-3/4の場合にのみ通常のフーリエ制限法が有効であることが分かっていたが,s=-3/4の場合の時間局所適切性を修正を加えたフーリエ制限法により証明した.この結果はI-メソッドにより直ちに大域適切性を導くだけでなく,別の方法によって得られていた局所適切性の結果と比較して,解の一意性に関する主張が上述の意味で改善されている.これは長い間未解決であった問題の一つであり,大きな進展であるといえる.
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