2008 Fiscal Year Annual Research Report
腎及び肝薬物トランスポータの発現制御機構の解明と個別化薬物療法への応用
Project/Area Number |
08J02202
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小笠原 健 Kyoto University, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 腎近位尿細管上皮細胞 / 有機アエニオントランスポータ / 有機カチオントランスポータ / プロモーター / 一塩基多型 / CpGメチル化 / 発現量 |
Research Abstract |
腎近位尿細管上皮細胞に発現ずる有機アニオントランスポークOAT1-4及び有機カチオントランスポークOCT2は、薬物または老廃物の排泄に重要な役割を担っている。近年、薬物トランスポークの発現量の個体差が、薬物の体内動態の個体差に関わっていることが明らかにされてきた。本研究では、薬物トランスポークの発現に影響を及ぼす因子を明らかにすることを目的として、上記薬物トランスポーク遺伝子のプロモーター領域の一塩基多型(regulatory SNP:rSNP)の探索を行った。さらに、プロモーター領域のCpGメチル化か、OCT遺伝子の発現に及ぼす影響についても検討した。 腎腫瘍患者の正常組織より抽出したゲノムDNAを用いて、各薬物トランスポータ遺伝子のプロモーター領域のダイレクトシーケンスを行った。その結果、OAT1-4の発現量を変化させるrSNPは見出されなかった。一方、OCT2で同定された3塩基欠失の変異(-578_-576delAAG)は転写活性を有意に低下させ、変異を有する群でmRNA発現量の減少傾向が認められた。従って、この変異がOCT2発現の個体差を規定する要因の一つとなることが示された。 さらに、腎特異的に発現するOCT2遺伝子の近位プロモーター領域のCpGサイトの肝臓と腎臓におけるメチル化状態を比較した。OCT2の近位プロモーターのCpGサイトは、肝臓で高頻度にメチル化されていたのに対し、腎臓ではメチル化の程度は低かった。また、OCT2の近位プロモーター領域のメチル化により、転写活性の減少及び転写因子USF1の結合阻害が認められた。従って、肝臓ではOCT2の近位プロモーター領域が高頻度にメチル化されるため、転写が抑制されていること、一方腎臓の近位プロモーター領域は低メチル化状態にあるため、USF1が転写を活性化していることが示された。
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