2009 Fiscal Year Annual Research Report
流れの最適化に基づいたフラクタル構造形成の理論的研究
Project/Area Number |
08J02204
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水戸部 六美 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フラクタル / 臨界現象 / Gumbel分布 / 自己組織化臨界現象 / 揺らぎ / 複雑ネットワーク |
Research Abstract |
本研究の目的は、血管や河川といった流れに起因して自己組織化臨界的にフラクタル構造が形成されるための条件を探索することである。自己組織化臨界とは、ある種の局所的な時間発展ルールに従って系が変化すると、全体として自発的に平衡系臨界点に接近し、その周りで揺らぎ続けるというものである。従って、この揺らぎの統計的性質を調べることは、自然界に偏在するフラクタル構造を統一的に理解する上で極めて重要である。一方、血管や河川のような実空間におけるフラクタル構造以外にも、航空網や流通ネットワークなど、通常のユークリッド距離が定義されない空間(複雑ネットワーク)でも、系が臨界的な性質を持つ時、拡張された意味のフラクタル構造が出現することが最近の研究により明らかになっている。実空間においては、"平衡・非平衡に関わらず、多くの臨界系において、秩序変数などの大域量の揺らぎは一般化Gumbel分布に従う"ことが知られているが、臨界複雑ネットワークでの大域量の揺らぎは未だ明らかになっていない。果たして、通常のユークリッド距離が定義できないという意味で特殊な臨界系においても、大域量の揺らぎは一般化Gumbel分布に従うのか否かという問題を明らかにすることは、多様な複雑系に潜む普遍的性質を調べる上で極めて重要である。そこで本年度は、臨界複雑ネットワーク上で大規模計算を行い、大域量の揺らぎを調べた。具体的には、次数分布関数がベキ則に従うスケールフリー・ネットワークと指数型次数分布関数を有するランダム・グラフの2種類の複雑ネットワークに対し、パーコレーション転移点における秩序変数(最大クラスターのノード数比)の揺らぎの分布関数を計算した。その結果、臨界スケールフリー・ネットワークでは、秩序変数の揺らぎが一般化Gumbel分布とは一致しないことが初めて明らかになった。このことは、"一般化Gumbel分布は臨界秩序揺らぎの真の意味での普遍分布ではない"ということを意味している。
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Research Products
(3 results)