2008 Fiscal Year Annual Research Report
流れの最適化に基づいたフラクタル構造形成の理論的研究
Project/Area Number |
08J02204
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
水戸部 六美 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フラクタル / 臨界現象 / Gumbel分布 / 自己組織化臨界現象 / 揺らぎ |
Research Abstract |
本研究の目的は、血管や河川など流れに起因してフラクタル構造が自発的に形成されるための条件を探索することである。非平衡プロセスによってフラクタル構造が形成されるメカニズムの1つに、自己組織化臨界(Self-organized criticality:SOC)がある。これは、ある種の局所的な時間発展ルールに従って系が変化すると、全体として自発的に平衡系の臨界点に接近し、その周りで揺らぎ続けるというものである。その結果、系の大域構造は平衡系臨界点の性質であるフラクタル性を獲得する。血管や河川も何等かのSOC的メカニズムで形成されると考えられている。SOCの場合、系の空間構造は、その臨界性から大きな揺らぎを持つ。この揺らぎの統計的な性質を調べることは、血管網や河川など、自然界に遍在するフラクタル構造を統一的理解する上で極めて重要である。そこで、本年度はまず平衡系臨界点におけるフラクタル次元の揺らぎについて研究した。 平衡・非平衡に関わらず、多くの臨界系においては、秩序変数などの大域量の揺らぎは一般化されたGumbel分布という普遍分布に従うことが知られている。本研究では、この秩序変数の普遍分布と臨界局所秩序変数のフラクタル性から、フラクタル構造を特徴付ける量であるフラクタル次元の確率分布関数の一般的表式を初めて解析的に導出した。フラクタル次元の分布関数は系のサイズや格子型には依存しないが、秩序変数の平均や分散に依存した非普遍的な分布となることが明らかとなった。また、この解析計算が立脚する仮定の正しさを確認するため、2次元パーコレーション・モデルの臨界点近傍の数値計算を行なった。その結果は解析結果と非常に良く一致していた。以上の研究成果は、自発的に形成されたフラクタル構造の統計的性質を理解する際に極めて重要となる。
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Research Products
(2 results)