2010 Fiscal Year Annual Research Report
精密分子触媒を用いたユビキタス結合の直接変換と機能性物質合成への応用
Project/Area Number |
08J02225
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柳澤 周一 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ビアリール / 炭素-水素結合 / パラジウム触媒 |
Research Abstract |
芳香環-芳香環結合を有する化合物(ビアリール)は医・農薬品のみならず、材料科学分野にも数多く見受けられる重要な物質群の1つである。そのため、ビアリール骨格を効率的に構築する基本的方法論の開拓は有機合成化学において、恒久的に重要な課題の1つである。我々はこれまでに、ハロゲン化アリールによる芳香環炭素-水素結合の直接アリール化を可能にする、いくつかの遷移金属触媒の開発に成功している。中でも、テトラアリールチオフェンのプログラム合成の研究過程で配位子によって、アリール化における位置選択性が異なる興味深いPd触媒系の開発に成功している(Pd/P[OCH(CF_3)_2]_3,Pd/2,2'-bipyridyl)。後の研究によって、Pd/P[OCH(CF_3)_2]_3はチオフェン環全般のβ位選択的なアリール化を可能にする汎用触媒であることが明らかとなっている。その一方で、Pd/2,2'-bipyridyl触媒系は未だ改良の余地が残されていた。反応条件の再検討の結果、本触媒系は、チオフェン類のみならず、チアゾールやインドール、ベンゾフランなどの電子豊富ヘテロ芳香環の直接アリール化に有効であることが明らかになった。また、想定触媒サイクルの中間体を用いた錯体化学実験から、Pd(II)を基軸とする酸化数の変化を伴わない触媒サイクル、もしくはPd(II)/Pd(IV)を経るレドックスサイクルによって反応が進行していることが示唆された。含窒素二座配位子を有するパラジウム触媒による芳香環の直接アリール化反応の前例はほとんどなく、パラジウム触媒における新たな可能性を拓いたと言える。また、機構解明研究で得られた結果はパラジウム触媒系において一般的に提唱されているPd(0)/Pd(II)のレドックスサイクルとは異なり、今後の触媒設計に新たな指針を与えるものである。
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Research Products
(3 results)