2010 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙大規模構造・重力レンズ現象を用いた暗黒物質・暗黒エネルギーの性質の探求
Project/Area Number |
08J02246
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加用 一者 東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | 宇宙大規模構造 / SDSS / 重力レンズ |
Research Abstract |
暗黒物質・暗黒エネルギーは、構造形成において大きく別けて「揺らぎのパターン」と「揺らぎの成長率」に影響を及ぼす。 「揺らぎのパターン」「揺らぎの成長率」の両者に関連した研究として、本年度は、銀河の速度情報を抜き出す手法の開発に注力した。まず、速度パワースペクトルを理論的に予想される精度で取り出せるかどうかを検証し、肯定的な結果を得た[論文3]。また、スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)の2点相関関数からも速度情報を取り出し、速度の大きさは標準的な宇宙項入りの冷たいダークマターモデルの予言と一致することを見いだした[論文投稿中arXiv:1006.4630]。しかしながら、これらの方法は小スケールの銀河速度のモデル化の方法に依存する。そこで、シミュレーションデータを用いて、小スケールの速度情報の影響を詳しく調べ、速度パワースペクトルを精度よく測定する方法を開発した[論文投稿中arXiv:1103.3614]。 また、「揺らぎのパターン」に関連して、従来とは桁で上回る(5000回)大量のN体シミュレーションデータから構築した密度揺らぎのパワースペクトルの共分散行列を用い、宇宙論パラメータ制限への、共分散の非ガウス性による影響を調べた[論文4]。パラメータ数が多い場合は、非ガウス性の影響は小さいことを見いだした。 「揺らぎの成長率」に関しては、昨年度に引き続き、SDSSクェーサーカタログから重力レンズクェーサーを探査する計画を推進し、新たに見つかった8個の重力レンズクェーサー[論文1]、およびSDSSデータリリースDR5相当の統計カタログを発表した[論文2]。本年度3月の観測により、SDSSの最終カタログDR7相当のレンズカタログを完成させる予定であったが、天候不順のため全くデータが取れず、完成は来年度に持ち越しになってしまったことは心残りである。
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Research Products
(6 results)