2008 Fiscal Year Annual Research Report
監視社会の形成プロセスに関する研究-都市部商店街における監視カメラ設置の事例から
Project/Area Number |
08J02307
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
朝田 佳尚 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 監視カメラ / フィールドワーク / 不確実性 |
Research Abstract |
本研究は、1990年代以降における監視カメラの普及という問題に対して、その設置プロセスに関する具体的な調査を行い、その知見から現代社会のあり方を理解しようとするものである。具体的には、1、監視カメラの設置が、様々な関係者のせめぎあいから達成される過程を明らかにして、監視を行う社会がいかに作り出されていくのかを、本研究は理解しようとしている。2、また、こうしたプロセスの中で、それぞれの立場の人々がいかに語り、どのような問題が不確実なものと捉えられ、カメラに正当性を付与することになるのかという分析を通して、各立場の人々を貫いて共有される暗黙の前提を析出して、そうした前提が優先的に参照されるのは、いかなる社会・文化的背景のためかということを、国際的な比較や既存の社会学の議論との照らし合わせながら検証する。平成20年度の前半期は、上述1の目的を達成するために、関西の地域社会における資料収集と聞き取りを中心としたフィールドワークを行い、そのデータをもとに学会発表と論文の作成を行った。次に、夏期には、国際的に共通する部分と日本の地域社会に特有の部分の両面を析出するという上述2に関わる目的のために、英国と韓国で観察調査を行なった。また、後半期は、前半期からのフィールドワークを継続しつつ、投稿した論文の理論部分を補強するために、文献・資料の収集と読解を行うとともに、監視カメラの利用に関する歴史的経緯を理解するという上述2の課題の一部を達成するために、大宅壮一文庫と国会図書館において資料収集を行った。以上の作業により、これまで知られてこなかった、地域における監視カメラ設置の過程を浮き彫りにすることができた。それにより、理念的な議論に傾きがちだった既存の監視研究を批判し、監視の問題を、地域社会のあり方や社会構造の観点から捉える必要があることを示した。
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Research Products
(2 results)