2008 Fiscal Year Annual Research Report
モリブデンポルフィセン金属錯体の創製と可視光駆動型物質変換システムの開拓
Project/Area Number |
08J02314
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前田 大輔 Kyushu University, 工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ポルフィセン / 光還元反応 / 光増感反応 / 酸素分子 / 一重項酸素 / モリブデン / スズ |
Research Abstract |
天然色素を規範とした環状テトラピロール骨格を持つ人工色素であるポルフィセンは、ポルフィリンの構造異性体の一つであり、天然系を凌駕する機能性を秘めた化合物であると言える。このポルフィセン配位子の光化学については、近年ガンに対する光線力学療法(PDT)への利用を目指した興味深い報告がなされている。しかし、ポルフィセン金属錯体では機能性についての評価、または触媒系へと展開した例は極めて少ない。 そこで本研究では、可視光、酸素分子、ポルフィセン金属錯体の三つを使った新たな触媒サイクルの構築を目指している。本年度は、金属錯体としてモリブデン、スズに着目し、新規ポルフィセン金属錯体を合成し、可視光に対する機能性について評価した。 モリブデンポルフィセン錯体は、可視光照射たより中心金属の還元反応を示し、その還元反応は同様のポルフィリン錯体と比較した際に量子収率の向上が得られた。これは、ポルフィセン配位子の光特性を反映した結果であると言える。さらに、この光還元体に酸素分子が結合することでシクロヘキセンの酸素添加反応が進行した。これは可視光と酸素分子のみの反応であり、非常にクリーンな触媒と言える。 スズポルフィセン錯体は、新たな光機能を期待し、これまでに報告例のない数種類のスズポルフィセン錯体の合成に成功した。これらスズポルフィセン錯体は、近赤外領域(950〜1000nm)に強い発光特性を示し、光や酸化に対する耐久性が高いことから、発光材料としての応用が期待できる。また、一重項酸素発生量子収率が0.71〜0.97と高く、ガンの光線力学療法(PDT)や光有機合成への展開が期待できる。このポルフィセンを配位子とした光増感剤は、可視領域の吸収帯が非常に大きいことから、光の有効利用の点からも優れた光増感剤であると言える。
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Research Products
(8 results)