2009 Fiscal Year Annual Research Report
酸化修飾を指標としたAPL治療メカニズムの解明と薬効予測マーカーの同定
Project/Area Number |
08J02324
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鍋師 裕美 Osaka University, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 白血病 / 三酸化ヒ素 / プロテオミクス / 酸化修飾 |
Research Abstract |
本研究では、薬物の投与に伴う"疾患の治癒過程"において、細胞内で量的・質的・時空間的に発現挙動が変化する蛋白質を同定し、薬物の治療効果や感受性を迅速に判定できるマーカーの確立および治療メカニズムの解明を目的としたファーマコプロテオミクス研究を行っている。本課題では、白血病治療薬として承認されている三酸化ヒ素(ヒ素)をモデル薬物として解析を行った。本年度は、昨年度までに見出したヒ素処理によって発現変動する白血病細胞内蛋白質の同定とともに、ヒ素処理によって酸化修飾を受ける蛋白質の探索・同定を行った。その結果、ヒ素を作用した白血病細胞で、BipやHSC70等のシャペロン蛋白質の酸化修飾が増加することが判明した(Nabeshi H.et al.Pharmazie, in submission.)。これら蛋白質の酸化修飾は、ヒ素高感受性細胞株および低感受性細胞株の両方で見出されており、ヒ素の白血病治療効果の発現に関与する可能性が考えられた。また、本検討で用いた成人T細胞白血病(ATL)はヒトリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)の感染により発症する。そこで、ヒ素のウイルス伝播への影響を評価したところ、ヒ素処理によって、ウイルス伝播に重要な細胞融合が抑制されることが初めて見出された。さらに、細胞融合に重要なエンベロープ蛋白質の発現が顕著に減少することが明らかになった(Nabeshi H.et al., Biol.Pharacol.Bull., 32(7)1286-1288.)。BipやHSC70は蛋白質のプロセシングなどに深く関与することから、これら蛋白質の酸化による機能低下が、エンベローブ蛋白質の正常なプロセシングを阻害することで、細胞融合を抑制している可能性が示唆された。本検討の結果から、ヒ素は難治性白血病であるATLの治療のみならず、HTLV-1の伝播抑制にも効果を示す可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Arsenic trioxide inhibits HTLV-1-induced syncytiums by down-regulating gp462009
Author(s)
Hiromi NABESHI Tomoaki YOSHIKAWA, Haruhiko KAMADA, Hiroko SHIBATA, Toshiki SUGITAb, Yasuhiro ABE, Kazuya NAGANO, Tetsuya NOMURA, Kyoko MINOWA, Takuya YAMASHITA, Norio ITOH, Yasuo YOSHIOKA, Shin-ichi TSUNODA, Yasuo TSUTSUMI
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Journal Title
Biol.Pharm.Bull. 32
Pages: 1286-1288
Peer Reviewed
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