2008 Fiscal Year Annual Research Report
言語的コミュニケーションにおける理解と規範の原理についての分析哲学的研究
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08J02338
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
古田 徹也 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ウィトゲンシュタイン / 大森荘蔵 / バーナード・ウィリアムズ / 言語の習得 / 論理 / 言語ゲーム / 規範性 / 倫理的思考 |
Research Abstract |
言語的コミュニケーションについての原理論的研究のうち、特に倫理的思考が絡んだコミュニケーションの内実について研究を進めた。 従来、脳神経倫理や生命倫理、メタ倫理の文脈においては、人間の倫理的思考の内実を究明するために、人間の生死をめぐる極限的事例(トロッコ問題、サバイバル・ロックリー等)を用いて議論がなされてきた。本研究では、極限的事例のこうした扱い方を批判的に検討することを目指した。特に、極限的事例に対する直観的判断に倫理的思考の本質を求める議論に対して、極限的事例の非現実性というものを強調して批判するR・M・ヘアの二層理論を詳細に検討した。更に、その二層理論では我々に無理な思考のプロセスを強いる上、人格の個別性・かけがえのなさという要素を倫理的思考から排除するということを、B・ウィリアムズの議論の読解を進めることで解明した。 以上の研究によって、「極限的事例についての判断の傾向性や、その際の脳状態に、人間の倫理的思考の内実を求める」という現在の脳神経倫理等の方向性に対して明確な反論を示し、倫理的思考が不断に織り込まれた人間のコミュニケーションの有り様について、現実に即したより豊かな視座を提供することを可能にした。以上の研究成果は、「生死をめぐる極限的事例が示すもの」という標題で論文にまとめ、発表した。 また、他の実績としては、専門家ではない一般の読者が現代哲学の主要な古典に触れて学ぶための橋渡しとして、『現代哲学の名著』という標題の図書を共同で著しか。
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Research Products
(2 results)