2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02374
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
段下 一平 Tokyo University of Science, 理学部・物理学科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 超流動 / 巨視的量子トンネル効果 / インスタントン / 光格子 / Bose-Hubbard模型 |
Research Abstract |
本研究では、光格子中のBose気体において量子揺らぎが超流動の崩壊に及ぼす影響を詳細に調べることを目的としている。二年度目である本年は「一次元リング状光格子中のBose気体における永久流の崩壊」という興味深い現象に関して、共同研究者のAnatoli Polkovnikov(Boston Universityに所属)と共に、巨視的量子トンネル効果による超流動流のダイナミクスを以下のように詳細に調べた。巨視的量子トンネル効果の研究において、トンネル確率を計算する理論手法としてインスタントン法が広く利用されている。しかしながら、この手法が巨視的量子トンネル現象におけるトンネル確率をどれほど精密に予言できるかは明確にはわかっていなかった。というのも、多体系のシュレーディンガー方程式の時間発展を厳密に計算することが一般的に困難であるため、インスタントン法と厳密解の比較がなされてこなかったためである。 そこで本研究では、インスタントン法が巨視的量子トンネル効果のトンネル確率を定量的に記述できることを数値的厳密計算との比較により確証した。TEBD法でリング状Bose-Hubbard模型のダイナミクスを厳密に計算し、超流動流が巨視的量子トンネル効果によって二つの異なる巻き数をもつ巨視的可峻別な状態間をコヒーレントに振動しうることを示した。この振動から抽出したトンネル確率をインスタントン法の結果と比較し、系の実効的なプランク定数が十分に小さいときにはインスタントン法の誤差が10%以下になることを明らかにした。また、TEBD法による超流動流の巨視的量子トンネル効果の実時間ダイナミクスを直接的にシミュレーションすることで、二つの巨視的可峻別な状態間の振動に伴って凝縮体波動関数の位相が局所的に2πだけ変わるという「phase slip」が起こっていることを見出した。
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Research Products
(10 results)