2009 Fiscal Year Annual Research Report
相対論的流体力学と不純物粒子の拡散過程の融合に基づくQGP中の輸送現象の研究
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08J02385
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
赤松 幸尚 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | クォーク・グルーオン・プラズマ / チャームクォーク / ボトムクォーク / 拡散現象 / 相対論的重イオン衝突 |
Research Abstract |
強い相互作用の基本理論である量子色力学(QCD)が支配する現象は、特に、初期宇宙に関連の深い超高温状態での現象は、相対論的重イオン衝突実験において実験と理論を比較しながら研究を進めることができる。より具体的には、超高温で実現すると予想されているクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)の物性の研究が中心的な興味である。QGPとは温度の低い領域では、ハドロンの中に閉じ込められているクォークとグルーオンが解放され、プラズマ状態を形成している物質相のことである。 QGPの物性の特徴は、クォークやグルーオンが強く相互作用しているという点である。これは二つのイオンが正面衝突ではなくて、一部分が重なる形で衝突したときの実験データから示唆されている。より定量的な尺度として、QGPの流体力学に基づく模型におけるずれ粘性係数があり、実験データはそれが小さい(ゼロでもよい)ということを示唆している。 我々は、さらに多面的にQGPを理解するために重いクォークを用いて研究を進めてきた。重いクォークは通常のQGPには存在せず、その意味で不純物であるとみなされる。その研究では、確かに重いクォークはQGPと強く相互作用するということが分かってきた。さらにより定量的に、重いクォークがQGP内で受ける摩擦力の係数を実験データと理論計算を比較することで引き出すことが出来た。 また、その摩擦力を用いて、新しい現象を予言する研究も行った。重いクォークが重イオンの衝突直後に創られる時には、その反粒子と逆方向を運動するように創られるが、QGPの中を運動するために、その運動方向の相関が消失するという現象である。これは、実験的には未だ測られておらず、理論計算からの予言である。
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Research Products
(7 results)