Research Abstract |
本年度は,昨年度に引き続き主に潤滑された金属平板と鋼球との衝突試験を対象として,インピーダンス法を適用することによって,衝突中(代表的には0.1ms)における油膜の挙動(潤滑膜の破断や境界膜の形成)を定量的に評価することを目指した.その結果,大別すると以下に示す二つの知見が得られた.一つ目は,衝突摩擦試験を対象とした場合についても,衝突中における真実接触面積を定量化することによって,油膜厚さと破断率を同時に定量化できることである.例えば,サンプルとしてポリアルファオレフィン(動粘度1300cSt @40℃)を用いて,金属平板上の同サンプルの初期厚さが1μm程度の場合,衝突仮定においては,球-平板間に形成される油膜厚さは一定値を示すが,下死点付近において,油膜厚さの現象とともに急激に油膜の破断が進行することがわかった,二つ目は,衝突現象とインピーダンス法を併用することによって,潤滑油添加剤の性能評価の可能性が示されたことである.例えば,上記の基油に添加剤としてオレイン酸銅,ステアリン酸,オレイン酸の3種類の油性剤を用いて,衝突時におけるインピーダンスの時間変化を計測した.その結果,すべての添加剤に対して,添加濃度の減少にともないインピーダンスの絶対値は減少し,偏角は増加する傾向が認められた.しかし,その推移曲線は添加剤の種類によって異なり,オレイン酸銅を用いたときの推移曲線が最も左側に現れ,ステアリン,オレイン酸の順に右側へシフトした.すなわち,より低濃度条件で低い偏角を維持するオレイン酸銅の境界潤滑性能が最も高いと示唆される結果である.以上のように,衝突時におけるインピーダンスを計測することによって,潤滑油添加剤の境界膜形成能力を評価できることがわかった.
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