2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02423
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 大雪 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | プラトン / パイドン / メノン / 問答法 / ディアレクティケー / 仮設法 / イデア / アナリュシス |
Research Abstract |
本研究は、プラトンの中期問答法を分析し、問答法がもつ発見法的(ヒューリスティック)な側面を明らかにすることを目標とするものである。このことを立証するために、昨年度は、主に『パイドン』の原因論を取り上げた(学会誌への発表2、および学会発表3)。 発表においては、プラトンが、消滅の原因を探るにあたって「大きな人が小さくなる」や「雪が溶ける」といったような日常的な現象に着目しつつ、それらの現象が成立するために不可欠な「生成消滅の枠組み」を析出していると解釈された。小さい人が大きくなるとき、物質的な変化を被っているにもかかわらず、「人」は生成も消滅もしない。だが、冷たい雪が熱せられるときには、同じように物質的な変化を被っていても、「雪」は雪のまま熱くなるのではなく、端的に消滅しなければならない-これはなぜか。イデアの定立やイデアと個物の関係、あるいはイデア間の関係の規定といった要素を含むイデア論は、われわれが日常経験しているこのような現象を説明するための装置であり、生成消滅一般の可能性の制約として要請されるものである。同時にこのイデアは、「雪は冷たい」のような必然的真理に確固たる基盤を与える存在であり、初期対話編においてソクラテスが実践していた問答を基礎付けるものでもある。 以上のような解釈が正しいとすれば、『パイドン』の原因論もまた、わたしが以前『メノン』の方法論を特徴づけて述べたように、「われわれにとってより先なるもの」から出発して「本性上より先なるもの」へと向かう発見的な方法として理解でき、本研究の仮説が確かめられたことになる。
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Research Products
(3 results)