2008 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙低密度領域のフロンティア開拓を目指すX線マイクロカロリメータの開発
Project/Area Number |
08J02427
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
星野 晶夫 Tokyo Metropolitan University, 理工学研究科物理学専攻, 特別研究員(DC2)
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Keywords | X線天文学 / X線マイクロカロリメータ / 断熱消磁冷凍機 / 熱スイッチ / 銀河団 / 非等温 |
Research Abstract |
本研究は、これまでの研究成果をもとに、「すざく」衛星を用いた低密度宇宙という困難ではあるが重要な観測対象をキーワードとした銀河団外縁部の研究とTES型X線マイクロカロリメータの動作環境構築とを並行して進める計画である。以下では、それぞれの研究内容と状況について報告する。 1.観測的研究 本研究では銀河団外縁部までの質量分布について温度と輝度の半径分布から非等温銀河団モデルをもちいた検証を行うことを試みた。扱った非等温銀河団モデルは、銀河団ガスのダークマターのポテンシャルへの寄与を無視し、ガス圧にポリトロープを仮定する物理法則に基づくモデルであり、ダークマターの密度モデルがNFWモデルとMooreモデルのときに解析的に温度とガス密度分布を得る。我々はA1413の温度と輝度に対して同時フィットを行うことで静水圧平衡と球対称の仮定の下で重力質量分布を求めr200までの重力質量を輝度中心から1.7Mpcまでの範囲で7.E14Msolar程度と見積もった。 現在、非等温SSMモデルの取りうるパラメータの範囲について物理的検証を進めているところである。とくにモデルで使われている各パラメータの取りうる範囲とデータに対するモデルの当てはめ方について注目して検証をしている。 2.実験的研究 宇宙の大構造を満たす銀河間物質の観測的証拠を得ることを目指し、「すざく」で果たせなかったカロリメータによる宇宙観測を実現すべく、TES型X線マイクロカロリメータの動作環境の構築を中心とした次世代X線天文衛星に向けた研究開発を発展させる。特に本年度は断熱消磁冷凍機の要素技術の研究をすすめることができた。冷凍機の要素技術としてわれわれは、昨年度まで取り組んできた冷媒となるCrKミョウバンを用いた磁性体カプセルの製作に加え、冷媒と熱浴の接続を制御する熱スイッチの開発に取り組んでいる。 熱スイッチとしては、器械的に熱浴との切り離しを行う方式(機械式熱スイッチ)をこれまで採用してきたが、熱接触の問題と動作部分を吊り上げるケブラーワイヤーに過度の負荷がかかり断裂するなどの問題があった。そこで、我々はガスの熱伝導を利用した熱スイッチ(ガスギャップ式熱スイッチ)で実績のある、国立天文台のASTEグループの松尾氏らとの共同研究を行いながらわれわれの冷凍機に最適化された熱スイッチの設計と開発を進めている。本年度は熱接触を切った状態での低温側への流入熱を0.7μW以下かつON時の熱伝導が6mW程度を実現する熱スイッチの設計と製作までをおこなった。この成果は2009年の春の天文学会で報告している。今後、熱スイッチの熱伝導度の詳細な評価を行う予定である。
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Research Products
(1 results)