2009 Fiscal Year Annual Research Report
メタ個体群を作る海洋性ベントスの生活史進化:時間的・空間的に不均質な環境への適応
Project/Area Number |
08J02450
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
入江 貴博 University of the Ryukyus, 熱帯生物圏研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生活史進化 / 表現型可塑性 / 温度-サイズ則 / 海洋性ベントス / メタ個体群 / 数理モデル / 飼育実験 / 野外調査 |
Research Abstract |
本研究の目的のひとつは、環境条件の異なる複数の生息地をまたいで分布する海洋性ベントスが、メタ個体群の内部で示す生活史の適応機構を明らかにすることにある。一年目の昨年度は潮間帯に生息するタカラガイの一種であるハナビラダカラMonetaria annulusをモデル生物として、野外調査と飼育実験を実施することで実証データを収集することに労力を費やした。本年度は昨年度に得たデータを解析し、その一部を論文として出版するだけでなく(Irie and Fischer 2009)、国際学会や海外の研究室でのセミナーにおいて研究成果を発表した。ハナビラダカラの体サイズに見られる地理的変異は、成熟時の体サイズが示す温度反応規範を考えることによって説明されることを実証的に示した。ハナビラダカラは、個体群間で成熟後の体サイズに大きな種内変異を示すことが知られているが、その原因はこれまで不明であった。沖縄本島の二個体群において成熟サイズの季節的変化をモニタリングした結果、成熟サイズは環境の温度と負の関係にあるという時間的・空間的パターンが明らかとなった。この事実は、ハナビラダカラで見られる体サイズ地理的変異が、「温度-サイズ則」と呼ばれる外温動物に広く見られる体サイズの温度反応規範によって生じている可能性を示唆するものである。年度の後半には実証研究から得た知見を基礎として進める理論研究に着手する準備を開始し、2010年3月からアムステルダム大学(オランダ)の理論生態学での研究活動を開始した。
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Research Products
(9 results)