2008 Fiscal Year Annual Research Report
脱植民地期ミクロネシアの土地訴訟にみる伝統的知識の構築に関する社会人類学的研究
Project/Area Number |
08J02475
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
飯高 伸五 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 社会人類学 / ミクロネシア / 南洋群島 / パラオ / 日本統治 / 脱植民地化 / 土地訴訟 / 伝統的知識 |
Research Abstract |
本研究の目的は、脱植民地期のパラオ共和国で頻発している土地訴訟において、人々が土地にまつわる伝統的知識-系譜、口頭伝承、親族集団の成員権、伝統的首長の正統性など-を近代的所有の根拠として構築していく過程を検討することにある。パラオの個別事例と他地域の事例との比較検討を通じて、本研究はオセアニアの土地制度の現代的諸相に関する一般理論を構築するとともに、伝統と近代の相克を背景とした島嶼国の社会問題を解明するための基礎資料を提供することも視野に入れている。以上の研究目的に則して、本年度の前半では、19世紀末以降ドイツ、日本、アメリカ統治下に置かれたミクロネシア(南洋群島)における植民地統治政策、とりわけ宗主国による土地政策の変遷および日本統治期の移住者の入植と経済開発の実態を把握するために、既存の民族誌の再検討、史資料の収集と読解、沖縄出身の旧移住者に対する聞き取り調査を実施した。本年度の後半では、現代パラオの土地訴訟において親族集団の成員権がいかに対象化されているのかを把握するために、短期の現地調査を実施した。具体的には、訴訟事例の収集と当事者からの聞き取り調査を通じて、当該の土地に埋葬されている祖先との系譜上の関係性や、当該の土地を管理する伝統的首長の正統性などが訴訟の争点となっていることを明らかにした。上記の研究成果は『People and Culture in Oceania』『移民研究』『南方文化』など査読付きの学会誌への寄稿のほか、日本文化人類学会、日本オセアニア学会、ジェトロ・アジア経済研究所、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所などでの口頭発表を通じて公表した。
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Research Products
(13 results)