2009 Fiscal Year Annual Research Report
計算機シュミレーションによる核酸結合タンパク質の塩基配列特異的認識機構の解明
Project/Area Number |
08J02480
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
栗崎 以久男 Kobe University, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | RNA結合タンパク質(RBP) / 分子認識 / フラグメント分子軌道法 / 分子動力学法 / 計算機シミュレーション / 量子化学計算 |
Research Abstract |
昨年に引き続き、分子認識のメカニズムを明らかにするために研究を遂行した。非極性残基が関係するタンパク質-RNA相互作用に注目した。計算機モデリングを用いてRNA塩基を異させた構造を用意した。天然構造ならびに変異体構造に対して分子動力学計算を行い、分子運動トラジェクトリーを元に結合自由エネルギーを算出した。自由エネルギーを要素に分けて解析したところ、溶媒効果やエントロピーといった効果が塩基の特異的認識に重要であることが分かった。さらに、局所的な相互作用に分解したところ、結合界而での相互作用の寄与自体は小さく、むしろ局所的な相互作用によるタンパク質全体の運動の変化が複合体の安定性に関与していることが分かった。以上の結果から非極性相互作用によるタンパク質のRNA認識メカニズムの一端を明らかにした。複合体の安定性は勿論、単独状態の構造も細胞内で正常に機能するために必要である。分子動力学分子動力学計算を用いて、複合体状態の構造から単独構造へ緩和する際の構造変化についても検証した。計算結果から、実験ではまだ確認されていない構造変化を確認した。また、複合体形成時における構造とも比較することで、単独構造では特異的相互作用部位が他の部位に比べて相対的に露出する傾向があることが分かった。これは、RNA結合タンパク質の分子認識において新しく得られた知見である。さらに、構造バイオインフォマティクスの手法を用いることで、RNA結合タンパク質が他のタンパク質と潜在的に相互作用する部分を予測した。単独構造ではβストランドが相互作用になる傾向が減少することが分かった。従来の計算機シミュレーションでは困難な、細胞内状態における分子の安定性について言及した。
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Research Products
(3 results)