2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国雲南省ナシ族における宗教的職能者の役割と親族及び出自の記憶についての研究
Project/Area Number |
08J02486
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
岡 晋 National Museum of Ethnology, 文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ナシ族 / 祖先祭祀 / 家社会 / 社会変化 / 観光開発 |
Research Abstract |
当初、7月の中国雲南省昆明での国際人類学・民族学会議(ICAES)に参加し、発表する予定になっていた。また、学会前後には、雲南省内で実地調査を行う予定でいた。しかし、5月上旬に中国政府から大会の無期限延期(その後、1年の延期に決定)が通達されたため、改めて海外調査を含めた年間のスケジュールを検討した。その結果、本年度は実地調査を行わず、既存のデータの再整理と分析を行うことにした。 5月末の学会発表では、ナシ族の祖先祭祀に注目して、ナシ族の社会構造を柔軟なものにしている「家」(日本の武家社会における「家」に似た概念)を中心とした継承と連帯のシステムを詳らかにした。一方、出版に関しては、まず『民博通信』への寄稿文において、ナシ族の老人とその家族の歴史を織りまぜながら、「社会の変化に対するナシ族の先見性と柔軟性」を明らかにした。これらは、父系制や母系制の分析概念で捉えられてきたナシ族の社会を、「家社会」として分析するもので、ナシ族の「家」を中心とした柔軟な社会構造を詳らかにした点で意味がある。また、MINPAKU Anthropology Newsletterへの寄稿文では、ナシ族地域で進められている野外型博物館の建設をめぐる村人のさまざまな思惑と葛藤を紹介しながら、少数民族地域での観光開発に「人類学」あるいは「人類学者」がどのように関与しているのかを明らかにした。 総じてみると必要文献資料を十分に収集でき、またナシ族の「家」ごとの継承システムと「祖先祭祀」のあり方についての既存データの整理がかなり進んだ。そのため、実地の補足調査を行う機会が得られなかったものの、既存データだけでも、先行研究との対比の中で、その研究の重要性を明らかにできた。この点は非常に大きな進展となった。
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Research Products
(3 results)