Research Abstract |
本研究の目的は,教師からの助言を想定した学習過程の様相を,神経科学の観点から明らかにすることである。小学校第6学年児童(8名)を対象に,算数課題として計算領域から虫食い算,図形領域からタングラムの実験課題を設定した。計測装置として光計測装置を用い,前頭前野の左右1箇所ずつのヘモグロビン濃度変化を計測することでその特徴を明らかにした。実験課題の特徴は,課題途中に一定の間隔でヒント提示を行うことで,教師の助言の状況を再現した点である。 実験の結果より,所要時間,事後感想などをヘモグロビン濃度変化と照合し,考察を行った。計算領域,図形領域の間には,大きな違いは認められず,同様の傾向が見られた。まず,理解の可否がどのようにヘモグロビン濃度変化に反映されるのかを検討した。その結果,最後まで理解ができなかった被験者は,ヘモグロビン濃度の増加が続いた。途中で理解ができた被験者は,ヘモグロビン濃度が理解前は増加したが,理解後は増加しなくなった。はじめから理解ができた被験者は,終始ヘモグロビンは増加しなかった。 次に,緊張状態がどのようにヘモグロビン濃度変化に反映されるのかを検討した。心拍の周波数解析では,0.25Hz付近の振幅が緊張状態の低さを示すことから,この周波数帯に着目した。最後まで理解ができなかった被験者は,ヒントに依存している場合に振幅が大きく,ヒントがなく自力解決を求められると振幅が小さくなった。途中で理解ができた被験者は,理解後に振幅が大きくなった。はじめから理解ができていた被験者は,問題への慣れにより,振幅が大きくなった。 これらのことより,助言が有効に働き学習が進むことは,ヘモグロビン濃度が増加から抑制に変化し,周波数解析の0.25Hz付近の振幅が大きくなることに反映すると考えられた。
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