2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02516
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小野 ひろ子 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | ウズラ / 2型脱ヨウ素酵素(DIO2) / 3型脱ヨウ素酵素(DIO3) / 甲状腺刺激ホルモン(TSH) / 下垂体隆起葉(PT) / 脳室上衣細胞 / 光周性 |
Research Abstract |
一年を通して変化する日長は動物の性腺発達や繁殖に影響を与える(これを光周性という)。視床下部の第三脳室上衣細胞で発現変動する甲状腺ホルモン活性化酵素(DIO2)および甲状腺ホルモン不活性化酵素(DIO3)は光周性の鍵遺伝子である。このうちDIO2は、長日条件特異的に下垂体隆起葉で産生される甲状腺刺激ホルモン(TSH)に発現が誘導されると性腺発達を促進することが判明したが(Nakao et al., Nature,2008 ; Ono et al., PNAS,2008)、DIO2と拮抗的に変動し、性腺発達を抑制するDIO3の発現制御機構は解明されていない。そこで本年度はDIO3の制御機構について検討することを試みた。DIO3は短日で高発現するが、長日では発現が抑制される。まず短日飼育下のウズラの脳室内にTSHを投与したところ、DIO3の発現が抑制された。そこでTSHの作用部位を特定するために、DIO3の転写調節領域約3kbを用いてルシフェラーゼアッセイを行った。このときTSHを細胞に投与しても転写活性レベルは変化しなかったが高い活性値が検出されたため、実験に用いたDIO3の転写調節領域の配列を調べたところ、転写因子のSP1の作用部位であるGC-boxが複数見つかった。そこで転写調節領域からGC-boxを欠失させたところ、先ほどの活性が有意に低下することが判明した。同様な抑制効果はSP1阻害剤であるミトラマイシンAを投与した際にも確認された。SP1の発現は脳室上衣細胞で確認されたが日長の影響を受けなかったため、次に長日条件下でDIO3発現を抑制する因子を探索した。まずTSHに誘導きれることが示されていたICERとDIO2の発現を詳細に調べた結果、これらの発現がDIO3の発現抑制開始に先立ち上昇を開始していた。さらに甲状腺ホルモン受容体が脳室上衣細胞で発現することや、ICERとT_3-TR複合体の結合部位がDIO3の転写調節領域に存在していたことから、それらの効果をルシフェラーゼアッセイにより調べたところ、双方が転写活性を抑制することが判明した。以上の結果より短日条件ではSP1が高いDIO3発現を実現していること、さらに長日に移行するとTSHにより発現誘導を受けるICERとDIO2由来のT_3がDIO3発現を抑制することが明らかとなった。本研究によりTSHはDIO2発現を促進する一方でDIO3発現を抑制するという相反する二つの制御を一手に担っていることが明らかとなった(Ono et al.,投稿準備中)。DIO2、DIO3はさまざまな動物の光周性を制御するが、本研究ではTSHがDIO2とDIO3の双方を制御することを世界に先駆けて発見した。今後、これらの成果が応用されて光周性研究が飛躍的に進歩し、将来的には家畜や家禽の生産性の向上につながることが期待できる。
|
Research Products
(5 results)
-
-
-
[Journal Article] Zona pellucida protein ZP2 is expressed in the oocyte of Japanese quail (Coturnix japonica).2010
Author(s)
Kinoshita M, Rodler D, Sugiura K, Matsushima K, Kansaku N, Tahara K, Tsukada A, Ono H, Yoshimura T.Yoshizaki N, Tanaka R, Kohsaka T, Sasanami T
-
Journal Title
Reproduction
Volume: 139
Pages: 359-371
Peer Reviewed
-
-