2009 Fiscal Year Annual Research Report
越境する「中国帰国者」の生活世界―包摂と排除をめぐる境界文化の社会学的研究―
Project/Area Number |
08J02552
|
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
南 誠 National Museum of Ethnology, 民族社会研究部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 中国帰国者 / 中国残留日本人 / 引揚者 / エスニック・マイノリテイ / ライフストーリー / 異文化理解 / 日中社会比較 / 国際人口移動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、越境する「中国帰国者」の生活世界の実態や、彼(女)らをめぐる包摂と排除のメカニズムを明らかにしつつ、それに関する社会学的分析や境界文化の「分厚い記述」を目指すことである。本年度は、昨年度の研究調査成果をふまえつつ、中国の外交部等の資料館や中国国家図書館、および、日本の外務省資料館で資料調査をおこない、戦後も引き続き中国に居住していた日本人に関する日中両国の政策について整理した。また関西地域の中国帰国者コミュニティを中心に、聞き取り調査もおこなった。 これらの調査成果を基に、本年度は、研究報告を1回おこなったほか、論考4本、聞き書き4本や雑誌1本を発表した。具体的には主に、以下の研究課題について考察した。(1)戦後の中国にいた日本人に対する中国側の政策がどのように形成されたのかを中国側の資料を用いて、明らかにした。(2)国家賠償訴訟運動での「中国帰国者」の活動について考察し、「中国帰国者」というエスニック・グループが表出していった歴史/社会的プロセスを明らかにした。(3)「中国残留日本人」の呼称とライフストーリーを手掛かりとして、そのアイデンティティの社会的構築過程について考察し、残留日本人らのアイデンティティのパフォーマティヴィティが政治的、社会的、対自的の三つの位相にわたって実践されていることを指摘した。これをふまえた上で、「中国帰国者」の生活世界を捉えるには、三つの位相を総合的に考察していく必要性があることを主張した。
|
Research Products
(6 results)