2010 Fiscal Year Annual Research Report
越境する「中国帰国者」の生活世界―包摂と排除をめぐる境界文化の社会学的研究―
Project/Area Number |
08J02552
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
南 誠 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国帰国者 / 中国残留日本人 / 引揚者 / エスニック・マイノリティ / ライフストーリー / 異文化理解 / 日中社会比較 / 国際人口移動/越境 |
Research Abstract |
本研究の目的は、越境する「中国帰国者」の生活世界の実態や、彼(女)らをめぐる包摂と排除のメカニズムを明らかにしつつ、それに関する社会学的分析や境界文化の「分厚い記述」を目指すことである。 本年度は、特別研究員の最終年度にあたり、これまでの研究成果をふまえて補充調査を行いつつ、最終まとめを行った。調査活動に関しては、具体的に、台湾の外交資料館と国史資料館、中国の外交部等の資料館や中国国家図書館、および、日本の外務省資料館で資料調査し、戦後も中国に取り残された日本人政策や日本人社会の実態について整理した。またハルビン市周辺に居住している中国残留日本人についても調査した。 これらの調査活動とは別に、今年度は、中国帰国者のアイデンティティのパフォーマティヴィティに関する論考を二本発表した。一本目は、「中国残留日本人」の呼称を手掛かりに、中国残留日本人のアイデンティティの社会的構築過程を明らかにしつつ、具体的な語りの分析をとおして、そのアイデンティティのパフォーマティヴィティには政治的、社会的、対自的の三つの位相があることを指摘した。もう一本は、中国残留日本人と個別引揚者のアイデンティティのパフォーマティヴィティに関する比較分析をとおして、中国残留日本人という法的カテゴリーが当事者のアイデンティティに与える影響を明らかにした。 さらに、今年度やこれまでの研究データを総合して、中国帰国者をめぐる包摂と排除に関する歴史社会学的な分析や、中国帰国者をめぐる表象と実践の境界文化に関する社会学的分析を行った。
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Research Products
(3 results)