2009 Fiscal Year Annual Research Report
次世代のスーパーバクテリオシン、ラクティシンQ/Zに関する研究
Project/Area Number |
08J02631
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩谷 駿 Kyushu University, 農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 乳酸菌 / Lactococcus lactis / 抗菌性ペプチド / バクテリオシン / 生合成機構 / 発現制御機構 |
Research Abstract |
Lacticin Q/Zは、乳酸菌Lactococcus lactis QU5/QU14によって生産される新奇バクテリオシンであり、既知の乳酸菌バクテリオシンとは異なる優れた抗菌性および諸特性を有するため、乳酸菌バクテリオシンの応用面での可能性を拡げる有望なバクテリオシンであると期待される。代表者は、ラクティシンQ/Zの安全で安定的な供給を目指し、同バクテリオシンの発現制御機構および生合成機構について研究を行っている。昨年度までの研究から、ラクティシンQ構造遺伝子(lnqQ)近傍の約16.7kbの遺伝子情報を得ており、lnqQ以外にも11個の推定orfが見出されていた。 そこで本年度は、まず各遺伝子群の転写解析を行った。その結果、lnqQ下流の5つのorf(orf3~orf7)がオペロンとして機能していることが示唆された。また、in silico解析の結果からこれらの遺伝子群はいずれも膜タンパク質をコードしているものと推定された。そこで、バクテリオシン非生産株であるLactococcus lactis subsp.cremoris NZ9000株を用いて、lnqQとこれら遺伝子群の共発現株を構築した。その結果、lnqQのみの発現株、orf3~orf7発現株(いずれもネガティブコントロール)では確認されなかった培養液上清中の抗菌活性が確認された。また、LC/MSによる分子量測定により、同画分にlacticinQが含まれることを確認した。以上の結果から、orf3~orf7領域がlacticin Qの菌体外輸送を担うトランスポーターをコードしていることが明らかとなった。 また、同時にバイオアッセイによる耐性試験の結果から、同遺伝子群は、lacticin Qに対する自己耐性機能を担うタンパク質もコードしていることが明らかとなった。Lacticin Qのように、リーダー配列を持たず活性型として翻訳されるバクテリオシンの生合成機構についての報告例はほとんどなく、今後の詳細な研究が望まれる。 また、lnqQ上流に見出されているorf2は転写制御因子と相同性を示した。そこで、昨年度に構築したQU5で利用可能な構成発現ベクターを用い、orf2をQU5内で過剰発現させた。結果、lacticin Qの生産量、および自己耐性能が大幅に上昇したことから、orf2が自身の発現により、lacticin Q生合成遺伝子群を正に制御していることが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)