2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02650
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
内藤 真帆 Kyoto University, 大学院・アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヴァヌアツ / 経路の動詞 / のぼる / くだる / オセアニア / ツツバ語 |
Research Abstract |
南太平洋に位置するヴァヌアツ共和国のツツバ語を調査・研究した。ツツバ語はオーストロネシア祖語から派生したオセアニア祖語に由来する無文字言語であり、ツツバ島に住む150人から500人に日常的に話されている。この言語では、移動の経路を表す三つの動詞sae「のぼる」、sivo「下る」、vano「横切る」が、ツツバ島内の移動や副都心の置かれるサント島内の移動、他島への移動といったさまざまな状況において使い分けられている。これらの語がどのような状況において使い分けられているのかに焦点を当てて現地調査し(調査協力者は70代のSara氏とTurabue氏。ともに未就学でツツバ島在住のツツバ語話者)、この三つの動詞が(1)土地の傾斜といった物理的上下による対立、(2)社会的、政治的、文化的、そして経済的中心への移動とそこから遠ざかる移動といった心理的上下による対立、(3)宣教師到来という歴史的理由により生じた語の対立、という三つのカテゴリーにおいて使い分けられていることを明らかにした。さらにこれらのカテゴリーにおいて、それぞれの動詞がどのような関係にあるのかを、語の使われる状況と語の意味に言及した上で説明した。この調査研究により、移動の経路を表す三つの動詞が何に依拠して使い分けられているのかを示しただけでなく、ツツバ語話者が彼らを取り巻く環境や社会をどのように捉えているのかといった彼らの世界観を示すこともできた。
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Research Products
(1 results)