2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナミビア半乾燥地域における「地生態系」と人間活動の関係に関する研究
Project/Area Number |
08J02678
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
手代木 功基 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 半乾燥地域 / ナミビア / 牧畜 / 植生環境 / 環境変動 / 社会変化 |
Research Abstract |
環境変動の影響を受けやすいナミビアの半乾燥地域では、近年の急激な社会システムの変化にともない、自然と人間の関係性も大きく変容している。本研究では、地形や植生、土壌といった多層的な自然環境の要素を「地生態系」として総合的に捉え、「地生態系」と人間活動の関係を長期間のフィールドワークを通して明らかにすることを目的としている。これまでは、主に地生態系の調査と人々の生業である放牧活動の研究を実施し、植生が地形や土壌に強く規定されて分布している状況や、それにともなって変化する家畜の放牧ルートの季節性などについて具体的に明らかにしてきた。最終年度にあたる今年度は、社会・経済変化の調査を行い、住民の放牧地利用の社会的な背景に関して検討した。2010年6月に実施した現地調査から、調査地域の家畜数は、2002年度から2006年度までは増加傾向にあったが、2006年度以降は一定もしくは減少するという傾向が明らかになった。この理由について検討すると、降水量の増減等とは関わりなく、家畜の販売機会の増加と大きく関わっていることが明らかとなった。調査地域では、2006年から家畜オークションが近郊都市で実施されるようになり、それにともなって家畜をオークションで積極的に売却する世帯が増加してきている。すなわち、オークションの普及に伴って、調査地域で放牧される家畜数が大きく増加することはなく、植生環境に家畜の放牧圧が与える影響は近年あまり変化していないと考えられる.このように本研究では、半乾燥地の自然環境の脆弱性を規定する諸要因を、地形や植生だけでなく、社会経済的な要因も含め検討し、「地生態系」と人間活動の関わりの複雑さを明らかにした。
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Research Products
(7 results)