2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02691
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 紀弘 The University of Tokyo, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中世史 / 仏教史 / 対外関係史 / 一切経 / 高山寺 / 宋版 |
Research Abstract |
第一に前年度に引き続き、中世における一切経の書写と輸入に関する研究を進めた。一切経の書写としては、主に愛知県新城市の徳運寺に所蔵される139巻の古写経を対象とした。前年度に国際仏教学大学院大学学術フロンティア事業の研究協力者として参加した調査で撮影したデジタル画像、書誌情報に基づいて目録を作成するとともに、それぞれの書誌的な分析を進めた。その成果は、国際仏教学大学院大学学術フロンティア実行委員会編『愛知県新城市徳運寺古写経調査報告書徳運寺の古写経』で発表した。次に、一切経の輸入に関しては、平安末期から鎌倉時代における宋版一切経の輸入についての研究を進めた。現存する一切経に加えて、史料上で確認できる輸入の事例を網羅的に集成し、寺社への寄進の主体、輸入者の変化に着目して分析した。その成果は、「宋版一切経の輸入と受容」と題して公表する予定である。また、前年度に調査した名古屋市の七寺一切経に含まれる北宋新訳仏典の分析を進め、「七寺一切経中の北宋新訳仏典」と題して公表した。 第二に、鎌倉時代の寺院生活史を考える上で不可欠の要素である日宋交流史に関する研究を進めた。今年度主に対象としたのが、明恵が高山寺を拠点に形成した僧侶集団と南宋との関わりで、公刊されている高山寺の聖教目録を基にして、現在高山寺に所蔵されている南宋版の章疏を検出し、蔵印から他所に流出したことが判明する分、そして写本として残っている分を合わせて集成した。次に、高山寺に残る鎌倉時代の石造宝篋印塔の図像的な背景についての検討を進めた。以上の成果の一部は、「高山寺の明恵集団と宋人」と題して公表した。 これまでに挙げた研究の他、博士論文「中世僧侶集団の成立史的研究-律家および三鈷寺流を中心に-」を基にして、僧侶集団や仏教観、寺院文化などに注目した新仏教の成立史に関わるこれまでの研究成果をまとめ、著書『中世禅律仏教論』を刊行した。
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Research Products
(4 results)