2009 Fiscal Year Annual Research Report
実験生物学および情報生物学による哺乳類体内時計機構の解析
Project/Area Number |
08J02726
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 雪乃 Keio University, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 概日リズム / 哺乳類 / 遺伝子発現制御 / 数理モデル / 時系列シミュレーション / 振動位相 / プロモーター活性 / mRNA分解速度 |
Research Abstract |
哺乳類の概日時計を構成する遺伝子群の相互発現制御ネットワークの理解に向けて、概日振動ネットワークモデルの数理解析を行った。転写制御機構が等しい仮定した時、転写強度と分解速度が発現位相に影響を与えることがわかった。すなわち、転写活性がより強いほど位相は後退し、逆に分解速度がより速いほど位相は前進することが明らかとなった。そこで、2つの時計遺伝子Per1とPer2を例にとり、プロモーター活性強度比とmRNAの分解速度比を測定した。CLOCK-BMAL1によるプロモーターの活性化はPer1の方がPer2の約3倍強く、mRNAの分解速度はほぼ等しかった。ところが、ここで得られたプロモーター活性比と分解速度比を数理モデルに適用したところ、これまでに哺乳類の時計中枢であるSCNにおいて観察されているPer1と月Per2の発現位相差を説明することはできなかった。Per2の発現位相がPer1の発現位相より4時間遅れるためには、両者のプロモーター活性を変化させる新たな制御が必要であることが示唆された。実際、Per2のポジティブフィードバック制御が位相差を再現することが昨年度の研究成果により明らかにされていたため、PERタンパク質によるポジティブフィードバック制御がかからない変異Per2::lucレポーター遺伝子を用いて、野生型Per2::lucと発現位相を比較したところ、約3時間の位相前進を観察することができた。従って、PERタンパク質によるポジティブフィードバック制御が、Per2の位相後退の主要な要素であることが強く示唆された。この結果は、概日振動機構において既知のネガティブフィードバック制御のみではなく、ポジティブフィードバック制御が加わることによって詳細な発現タイミングの調整がなされていることを示している点で重要である。
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Research Products
(2 results)