2009 Fiscal Year Annual Research Report
立体的な相互作用を利用した回転情報伝播システムの創製
Project/Area Number |
08J02731
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大城 宗一郎 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分子機械 / ダブルデッカー型ポルフィリン錯体 / 分子ベベルギア / 回転同調-非同調のスイッチ / FRET / 配向因子 / エラストマーフィルム / 巨視的な力学入力 |
Research Abstract |
本年度は3枚の回転子を組み合わせたベベルギア型分子の詳細な検討を行った。評価に用いた分子ベベルギアは、ポルフィリン2枚とランタニド金属から合成されるポルフィリンランタニド錯体を基体としており、一方のポルフィリンのメソ位に導入した2つのピリジル基に2枚のRhポルフィリンを配位させることで得られる。ランタニド金属としてLa(III)を用いた分子ベベルギアにおいて、3枚の歯車分子が立体的な相互作用により噛み合い、分子レベルの異種回転子間で回転挙動が同調することを、温度可変核磁気共鳴スペクトル測定により明らかとした。この結果は、回転情報を異方向へ同時に伝搬させることが可能であることを示しており、ピリジル基の導入部位を変えることにより、回転情報の伝搬方向(水平方向もしくは垂直方向)の制御も可能であることが示された。また、塩基存在下においては、3枚の回転子間における回転挙動を非同調へと切り替えることにも成功している。このような分子素子の開発は、天然の回転モーターとして知られるATPシンターゼのような高度な生体システムを人工系で達成させる上で重要な研究になると考えられる。 一方、これまで申請者が提案してきた分子ベベルギアを含め、分子機械の研究分野においては、「分子の動作の制御」から「機能の発現」、「機能性材料の開発」へと展開する手法の開拓が望まれている。そこで今回、分子スケールの運動を制御することにより、分子の光学特性を変化させるシステムの構築を目的とし研究を行った。エラストマーフィルムに導入された集光性分子の運動、コンフォメーションは巨視的な力学入力により動的に制御されることを明らかとし、結果として一分子の集光性機能を切り替えることに成功した。これは、「分子運動」と「遷移双極子の配向度変化」を絡ませることにより実現された成果であり、分子機械を機能性材料へ展開するための指針を与えると確信している。
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Research Products
(7 results)