2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02737
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
初見 健太郎 Osaka University, 社会経済研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ミクロ経済学 / ゲーム理論 / 公共経済学 / 寄付行動 / 行動経済学 / NPO |
Research Abstract |
前年に引き続き、不完備情報ゲーム理論を慈善的寄付行動の分析に応用する研究を進めた。公益団体、非営利団体などが慈善活動、社会貢献活動のプロジェクトのために寄付を募るとき、はじめから広く一般に対して寄付を懇請するよりも、予め水面下で一部の慈善家から寄付の約束を取り付けておき、その事実を合わせて一般に公開すると一般からの寄付額も増えるという経験則が知られている。List and Lucking-Reiley(2002,Journal of Political Economy 110,215-233)はこの経験則についてのフィールド実験を行い、その事実を確認した。私は、本研究において、寄付額が一定で、参加者は寄付するか否かのみを決定する状況を大域的協調ゲームのモデルとして定式化した。慈善的寄付を行う人がその選好に準利他性を持つとき、大人数による慈善的寄付行動は協調ゲームとして表せる。また、大域的ゲームは参加者がお互いの選好について完全には知り得ない状況を扱う不完備情報ゲームの一つであり、慈善的寄付行動に非常に合致する。均衡の比較静学の結果として、単純に水面下での募金のおかげで目標達成に必要な残りの額が減る、そのことのみから、一般からの総寄付額、および実際に寄付をする人の割合が、事前の水面下での寄付額に対して連続的に増えることを示した。現在まで水面下での募金の効果として「目標達成に必要な残りの額が減る」ことに注目した理論論文では、一般からの総寄付額は水面下の寄付額に対し連続的には増加せず、非連続的に寄付額がジャンプするモデルのみしか存在していない。つまり、従来の理論論文には実験結果との乖離が存在した。本研究は理論と実験結果の乖離をより縮めることに成功しており、現在国際査読誌より改訂要求を受けている。
|
Research Products
(3 results)